研修医1年目、今日も生きている。
自分が生きた証を残しておこうと思う。
全財産は妻に譲る。
なお、まだ死んでいない。
ただし、元気でもない。
同期はすでに疲弊して脱落しそうである。
「俺、医師向いてないわ。」
「俺、今日こそは家に帰ってゆっくり寝るのが夢なんだ。」
「俺、このローテ乗り切ったら彼女にプロポーズするんだ。」
「俺、上級医の名前聞いただけでフラッシュバックして辛い。」
みんなそれぞれ死亡フラグを平然と口に出す。
誰一人、来年の話はしない。
今日を生き抜くのに精一杯である。
幸せな明日が来ることは、誰も前提にしていない。
この病院は田舎の超急性期病院。
コンセプトは「医師10年分の経験を初期研修2年に詰め込む」。
病院見学の時に事務の人がそう言っていた。
みんな、それを受け入れ、乗り切ろうと入職した志の高い同期である。
しかし、10年分の労働は負荷が重すぎた。
10年分の責任も一緒に詰め込まれていた。
2つ上の先輩はすでに仕事に耐えられず消えていた。
1つ上の先輩は上級医のパワハラで休職していた。
そんな環境下にいる上級医。面構えが違う。
外れていないネジを見つける方が難しい。
下記が入職直後の社畜医のスケジュールである。
4月7日(月) :日勤+ICLS講習+当直=寝られない
4月8日(火) :日勤+飲み会=寝られない
4月9日(水) :日勤+オンコール=寝られない
4月10日(木) :日勤+当直=寝られない
4月11日(金) :日勤+オンコール=寝られない
4月12日(土) :日勤+オンコール=寝られない
4月13日(日) :日勤+当直=寝られない
4月14日(月) :日勤+オンコール=寝られない
4月15日(火) :日勤+オンコール=寝られない
4月16日(水) :日勤+当直=寝られない
結論:10日間、まともに寝られた日は0日である。
なお、これは特別な日ではない。
入職翌週にも関わらず、平然と10日間に当直を4回入れてくるあたり、素晴らしい医療体制である。
当直はもちろん一睡もできない。
働け。労働基準法。
当院の救急外来は多い日で1日100件を超える来院者を誇る。
ファーストタッチ、初期対応からコンサルトまでを初期研修医が担う。
上級医は形上いるが医局からおりてこない。
上級医は天上人であり、初期研修医は消耗品である。
common diseaseから脳卒中、敗血症、心筋梗塞、急性大動脈解離まで、雪崩の様に運ばれて来る。
涙ながらに初期研修医2年目に教えを乞い対応する。
教えてもらえるだけで、まだ生きていける。
研修医同士で助け合う。
それこそが、この病院での生存条件だ。
社畜医、今日も生存。

