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【誰が殺した?】研修医1人当直という医療制度【社畜医生存日記6】

【誰が殺したのか】研修医1人当直という医療制度【社畜医生存日記6】

研修医1年目、今日も自分は生きている。

自分が生きた記録を残しておこうと思う。

全財産は妻に譲ることにした。

縁起でもないが、手続きは早い方がいい。

同期とは一緒に研修を終えたい。

この2年間で叶えたい望みは、それだけである。

遺書ではない。

ただの雑務日誌である。

同期が朝から死にかけている。

「俺、当直が憂鬱すぎる。」

「俺、1人であの人数は無理。」

「俺、自分の判断に自信がない。」

「俺、ミスったら医師人生終わるよな。」

無理もない。毎日、犠牲になる研修医がいる。

まさに、消耗品扱いである。部品なので毎年補充される。

当院は田舎の超急性期病院。

救急外来は多い日で1日100件を超える。

ファーストタッチ。

初期対応。

専門医コンサルト。

全部、初期研修医の仕事である。

上級医は概念上存在するが、姿は見たことが無い。

入職して数日しか経過していないが、全科日当直を研修医2年目と担当した。

電子カルテのログイン方法すら怪しい状態で、救急外来に投げ込まれた。

そこは通常営業なのだろうか、地獄絵図だった。

救急車の列。引継ぎ待ちの救急隊。

溢れかえる待合室。数十名の未診察の患者。

満床のストレッチャー。ERに響き渡るモニター音とうめき声。

逃げ場は無い。

トリアージは合っているのか。

そもそも全員生きているのか。

報道では「医療崩壊が起こり得る未来」が語られている。

違う。

すでに起きている。

現在進行形で。通常業務として。

頭が真っ白になる。

一体どこから手をつけていいのか分からなかった。

研修医2年目は言った。

「いいから体を動かせ!」

上級医はいなかった。

書類上は存在する。

医局という安全地帯にいる。

研修医とメディカルスタッフだけで救急外来をまわす。

そこからは記憶が途切れる。

寿命だけが削られる。気が付いたら朝だった。

看護師も同様である。

夜勤は常に欠員。ナースコールは同時多発。

転倒。急変。点滴漏れ。クレーム。

休憩は都市伝説。

記録が終わらなければ帰れない。

給料と責任が釣り合わない。

患者に怒鳴られ、医師に急かされ、上に詰められ、下に頼られる。

誰にも頼れないポジション。

それでも彼女たちは笑顔で患者に接する。

プロだからだ。壊れるまでは。

これで適切な医療が出来ていると思うだろうか。

研修医の経験値で。無理に決まっている。

コンサルトもまともに受けてもらえない。

これは前回の日記を読んでほしい。

入職1か月で多くを学んだ。

「24時間以内に2回救急車→原則入院。」

「同症状で2回来院→原則入院。」

「研修医はオーバートリアージ。」

医学ではない。護身術である。

カルテは盾になる。

「本人検査拒否」

「家族と相談」

「処方は最長3日分」

「専門外来受診指示」

自分を守る文章である。

ゴールデンウイークが終わったところで、研修医2年目はいなくなった。

経験値1か月の研修医1年目ただ1人でこの救急外来を乗り切るしかなくなった。

孤独になった。頑張っても頑張っても、ひたすら文句を言われる世界線で。

上記のように思っていた時期もあった。

が、今は個人を責めるつもりは一切ない。

当直明けに帰れない。

手術後に当直。当直後に手術。誰でも壊れる。

当直医を雇えばいい。だが、病院は赤字。

国立9割、公立9割、私立6割。

診療報酬は削られ、給与は上がらない。

精神論だけが値上がりする。

そんな状況で頑張れる人間がいるのだろうか。

個人の問題ではない。構造上の問題である。

人手不足。低報酬。政府はさらに削減しようとしている。

人は減る。当然である。

ある当直。

研修医1年目の同期が患者を帰した。

翌朝、上級医が確認し同期を呼び出す。

「電話しろ。一人ずつ。」

当直中に一緒に診ていれば済む話だが。

誤診も出る。電話を鳴らす。患者は怒る。

「こんな病院に入院したくはない。」

正論である。

慢性的な人手不足。

研修医がマンパワーとして動員されている。

そして事故が起こる。現実の一部が世間に露呈する。

今でも記憶に新しい。

愛知県。上腸間膜動脈症候群(SMA症候群)。10代死亡。

胸が痛む。

家族の立場なら研修医を恨む。

同然だ。

だが、これが制度の成果である。

主訴は「嘔吐」。鑑別は多岐にわたる。

採血。血ガス。尿検査。妊娠反応。心電図。頭部CT。胸腹骨盤CT。

他にも薬剤性や中毒など。見逃しが無いように、いや、自分の身を守るために検査を行う。

そしてなにより、検査の評価も難しい。

今回の事件は氷山の一角に過ぎない。

マスコミは言う。

「研修医の誤診」

研修医の誤診を前面に押し出してくる。

医療より再生数の方が大切らしい。

研修医が患者を殺す。

一部、事実である。

だが、刃を握らせたのは制度だ。

やるべきは、批判ではなく構造改革なのだ。

今日も同期はおびえている。

訴訟。

懲役。

実名報道。

啓発のつもりで書く。

同じ構造で死ぬ人を減らすために。

研修医同士で支えあい、看護師はじめ、メディカルスタッフに助けられ、今日も救急外来を回す。

制度に殺されないように。

社畜医、今日も生存。

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