発作性夜間ヘモグロビン尿症の特徴-血栓症-NAP-Ham試験の
覚え方・ゴロを教えてほしい。
こういった悩みを解決します。
本記事では発作性夜間ヘモグロビン尿症の特徴を総まとめして、
覚え方・ゴロを紹介します。
ゴロでサクッと覚えちゃおう!
発作性夜間ヘモグロビン尿症の特徴・病態・機序を簡単に復習【CBT国試対策】
発作性夜間ヘモグロビン尿症PNHとは、
- 後天的な造血幹細胞の遺伝子異常により細胞膜に存在するGPIアンカー蛋白が欠損してしまう疾患
です。
GPIアンカー蛋白は
- ①補体制御蛋白であるCD55とCD59
- ②アセチルコリンエステラーゼAchE
- ③アルカリフォスファターゼALP
を細胞膜に固定します。
したがって、GPIアンカー蛋白が欠損すると、①②③が固定されずに失われ、
- ①CD55とCD59欠損→補体活性化にて補体を制御できず血管内溶血
- ②AchE欠損→AchE活性低下
- ③ALP欠損→NAPスコア低下
となります。
直接Coombs試験陰性(AIHAを除外)し、
フローサイトメトリーでCD55陰性またはCD59陰性の血球(PNH型血球)を確認することで、
発作性夜間ヘモグロビン尿症の確定診断となります。
cf. 【CD分類一覧】細胞表面マーカーと疾患の覚え方・ゴロ【CBT国試対策まとめ】
他にも特徴があるので、覚え方・ゴロと一緒に確認していきましょう。
PNH発作性夜間ヘモグロビン尿症の特徴-血栓症-NAP-Ham試験の覚え方・ゴロ
ゴロ:PNH
P→Platelet(血小板)→血栓症
N→NAPスコア低下・Nai(血管内溶血)
H→Ham試験陽性・Hann(汎血球減少)
したがって、PNH発作性夜間ヘモグロビン尿症の特徴は
- 血栓症
- NAPスコア低下
- 血管内溶血
- Ham試験陽性
- 汎血球減少
と分かります。
なぜ発作性夜間ヘモグロビン尿症PNHは夜間に起こる?【病態・機序】
現在知られている病態は
- ①補体はアシドーシスで活性化するため、
夜間の低換気による血中CO2増加(アシドーシス)→補体活性化→血管内溶血 - ②補体はエンドトキシンで活性化するため、
夜間の腸蠕動運動低下によるエンドトキシン増加→補体活性化→血管内溶血
の2つです。
血管内溶血ではヘモグロビン尿(赤褐色尿)やヘモジデリン尿(赤褐色尿・鉄染色で青色)が生じます。
特にPNHでは、夜間に補体が活性化するため、
早朝起きて一番の尿がコーラのように濃い「早朝のワインカラー尿」が特徴になります。
【実は、定義上、血尿は間違い】
血尿の定義は「顕微鏡下で赤血球5個/HPF以上」なので、赤い血=血尿ではないことに注意です。
ヘモグロビン尿は赤血球ではなくヘモグロビンが尿中に存在するだけなので、定義上は血尿ではありません。
しかし、発作性夜間ヘモグロビン尿症では患者が血尿だと思ってくるので、割り切りましょう。
なぜ発作性夜間ヘモグロビン尿症PNHで血栓症?【病態・機序】
血管内溶血によって血中に赤血球由来のADPやHbが増え、
さらにCD55欠損・CD59欠損により凝固系の活性化、線溶系の障害によって血栓症が起こると言われています。
通常血中に存在しないものがあると血栓をきたすんだね!
血栓症として深部静脈血栓DVT(Budd-Chiari症候群・脳静脈・腸間膜静脈など)が有名です。
なぜ発作性夜間ヘモグロビン尿症PNHでNAPスコア低下?【病態・機序】
上記の「発作性夜間ヘモグロビン尿症の特徴・病態・機序を簡単に復習」で解説した通り、
GPIアンカー蛋白の欠損によりアルカリフォスファターゼが細胞膜に固定されずに失われるからです。
NAPスコアが低値になる疾患は限られているので、ゴロ・覚え方でしっかりマスターしましょう。
Ham試験・砂糖水試験(シュガーウォーターテスト)とは?
原理と方法【発作性夜間ヘモグロビン尿症PNH】
発作性夜間ヘモグロビン尿症PNHではHam試験陽性・砂糖水試験(シュガーウォーターテスト)陽性となります。
Ham試験
補体は酸性で活性化することが知られています。
これを利用して、Ham試験では患者血球に塩酸を加えて溶血するかどうかを調べます。
- Ham試験陽性:活性化した補体が赤血球膜を破壊します(溶血が生じます)。
- Ham試験陰性:活性化した補体はCD55・CD59に制御され赤血球膜は破壊されません(溶血が生じません)。
砂糖水試験(シュガーウォーターテスト)
補体は低イオン環境では赤血球膜への結合能が増強することが知られています。
これを利用して、砂糖水試験では砂糖水(低イオン)に患者血球を加えて溶血するかどうかを調べます。
- 砂糖水試験陽性:補体が赤血球と結合し溶血が生じます。
- 砂糖水試験陰性:補体が赤血球と結合しますが、CD55・CD59に制御され溶血は生じません。
なぜ発作性夜間ヘモグロビン尿症PNHで汎血球減少?【病態・機序】
PNH発作性夜間ヘモグロビン尿症は後天的な造血幹細胞の遺伝子異常です。
- ①造血幹細胞は遺伝子異常(GPIアンカー蛋白の合成障害)によって赤血球以外の白血球や血小板も作りにくくなるため
- ②赤血球に限らず白血球・血小板もGPIアンカー蛋白が欠損しており、補体の攻撃を受けるため
汎血球減少を生じます。
造血幹細胞は赤血球・白血球・血小板の生みの親だから、
赤血球に限らず造血障害が起こる場合があるんだね!
赤血球のみ低下している場合もありますが、
進行して汎血球減少をきたす可能性がある疾患です。
汎血球減少をきたす疾患は限られているので、ゴロ・覚え方でしっかりマスターしましょう。
発作性夜間ヘモグロビン尿症と発作性寒冷ヘモグロビン尿症の違い
- 発作性寒冷ヘモグロビン尿症:PCH:paroxysmal cold hemoglobinuria
- 発作性夜間ヘモグロビン尿症:PNH:paroxysmal nocturnal hemoglobinuria
ほとんど名前が同じなので見間違いに注意!
PCHとPNHは共に発作性に血管内溶血(つまりヘモグロビン尿)をきたす疾患です。
しかし、機序は全く異なります。
PCHは自己免疫性溶血性AIHAの一種であり、寒冷暴露+自己抗体による血管内溶血ですが、
PNHは赤血球膜に存在する補体から細胞を守るGPIアンカー蛋白が欠損しているため、
夜間低換気によるアシドーシスで補体が活性化し血管内溶血が起こります。
PNH発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療「エクリズマブ」の覚え方・ゴロ
PNH発作性夜間ヘモグロビン尿症の問題点は血管内溶血+骨髄不全(汎血球減少)+血栓症なので、
- 血管内溶血に対して補体阻害薬の「エクリズマブ」
- 骨髄不全(汎血球減少)に対しては再生不良性貧血に準じた治療
- 血栓症に対して抗凝固療法
- 根治治療は造血幹細胞移植
となります。
覚え方:「夜間→月食(英語でeclipse)→エクリズマブ」と連想します。
発作性夜間ヘモグロビン尿症
↓
月食(英語でeclipse)
↓
エクリズマブ
エクリズマブは補体に対するモノクローナル抗体で、補体活性化を抑制することで血管内溶血を阻止できます。
終わりに
お疲れさまでした。
参考になれば幸いです。
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