脂質異常症の表現型分類って何?
遺伝性高脂血症の家族性高コレステロール血症について教えてほしい!
こういった悩みを解決します。
本記事では脂質異常症WHO表現型分類について、増加するリポ蛋白-TG-TC-遺伝形式の覚え方・ゴロを紹介します。
脂質異常症の原因と試験でのポイントを加え、医師国家試験問題で演習して完璧にしましょう!
ゴロでサクッと覚えちゃおう!
国試よりCBTの方が難しく問われるWHO分類!
【脂質異常症WHO表現型分類】増加するリポ蛋白-TG-TC-遺伝形式の覚え方・ゴロ
脂質異常症には
- WHO表現型による分類
- 原因による分類
の2つがあります。
この章ではWHO表現型分類を取り上げ、次章で原因による分類を解説します。
WHO表現型分類では「増加するリポ蛋白」+「TGの値」+「TCの値」+「遺伝形式(次章)」を関連付けて覚えましょう。
『CM・VLDL・IDL・LDL・HDL』についてはコチラを参照してから進むと理解がしやすいです。
※CM:カイロミクロン
増加するリポ蛋白の覚え方・ゴロ【脂質異常症WHO表現型分類】
まずは、
①増加するリポ蛋白を1つ覚えて、
そのあと、
②VLDLを追加で覚えるよ!
①ゴロ:カリブ海『CLIVCai』
C→CM
L→LDL
I→IDL
V→VLDL
C→CM
以上より、
- Ⅰ型はCM
- Ⅱ型はLDL
- Ⅲ型はIDL
- Ⅳ型はVLDL
- Ⅴ型CM
が増加すると分かります。
さらに、
②覚え方:Ⅱbの「b:ビィー≒V」とⅣとⅤの「V:ヴィー」ではVLDLが増加する
b(≒V)とV→VLDL
音が似てるbとVが含まれる型には、
同じく音が似ているVLDLが増加するんだね!
を考慮すると、
- Ⅰ型はCM
- Ⅱa型はLDL・Ⅱb型はLDL+VLDL
- Ⅲ型はIDL
- Ⅳ型はVLDL
- Ⅴ型CM+VLDL
が増加すると分かります。
ちなみに、1+4=5だから、
Ⅰ型のCM+Ⅳ型のVLDL=Ⅴ型のCM+VLDL
という覚え方もある!
TGトリグリセリドとTC総コレステロールの覚え方・ゴロ【脂質異常症WHO表現型分類】
TGが正常のⅡa型
TCが正常のⅣ型
を覚えよう!
TGが正常だったらⅡa型確定!
TCが正常だったらⅣ型確定!
覚え方①:TGのGジーの「ジ」はギリシャ数字で「Ⅱ」
モノ=1、ジ=2、トリ=3、テトラ=4だね。
覚え方②:タイガーがニャー(=^・^=)
タイガー→TG
ニャー→ニア→Ⅱa
覚え方③:TCのCシー=シ=4=Ⅳ
以上より、
- Ⅱa型ではTGが正常で他の型では増加する
- Ⅳ型ではTCが正常で他の型では増加する
と分かります。
TGが正常か?増加か?は考えても導ける。
では、「CM→VLDL→IDL→LDLの順でTGの割合が減少していく」と説明しました。
つまり、CMではTG↑↑↑・VLDLではTG↑↑・IDLではTG↑・LDLではTG→と考えられ、
LDLのみ増加するⅡa型ではTG濃度が正常になるのです。
※Ⅰ型とⅤ型ではCMが増加するため、TGも顕著に増加する。
遺伝形式の覚え方【脂質異常症WHO表現型分類】
詳しくは次章で解説しますが、
原発性高脂血症のWHO表現型分類と遺伝形式を覚えるために、
ますはWHO表現型分類と遺伝形式を結び付けます。
CBT・国家試験的なX染色体遺伝(XD・XR)は数が限られているので、
その他は常染色体遺伝のADかARかを覚えることになります。
覚え方:戦況は劣勢から優勢になり、歴史は繰り返す=劣→優→劣→優→劣
以上より、原発性高脂血症の遺伝形式は
- Ⅰ型はAR
- Ⅱ型はAD
- Ⅲ型はAR
- Ⅳ型はAD
- Ⅴ型はAR
と分かります。
文献によって遺伝形式は異なりますが、現時点では上記のように覚えて差し支えないです。
特に、Ⅱ型のAD常染色体優性遺伝は家族性高コレステロール血症として重要なので覚えておきましょう。
血清外観【脂質異常症WHO表現型分類】
血清外観はTGトリグリセリドとコレステロールの比率で決まります。
TGはCM>VLDL>IDLに多く含まれ、LDLには少ない(LDLはコレステロールが多い)です。
したがって、リポ蛋白と血清外観の組み合わせは
- CMはTGの割合が多いためクリーム色
- VLDLとIDLは白濁
- LDLはコレステロールの割合が多いため透明
となります。
つまり、
- CMが単独で増加するⅠ型では血清外観がクリーム色で白濁しない
- LDLが単独で増加するⅡa型では血清外観が透明で白濁しない
となり、その他Ⅱb型~Ⅴ型は白濁します。
またイメージしやすいように、Ⅰ型を下部に移動しⅡa→Ⅱb→Ⅲ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰに並べ替えると、
右下の図のようにTGと血清外観のグラデーションができます。
【遺伝性高脂血症とWHO表現型分類】FH家族性高コレステロール血症の診断基準
脂質異常症の原因には
- 原発性高脂血症(遺伝性高脂血症)
- 続発性高脂血症(二次性高脂血症)
の2つに分けられます。
原発性高脂血症(遺伝性高脂血症)
原発性高脂血症には主に6種類あり、
- WHO表現型分類Ⅱ型・遺伝形式AD=FH家族性高コレステロール血症とFCHL家族性複合型高脂血症
- WHO表現型分類Ⅲ型・遺伝形式AR=家族性Ⅲ型高脂血症
- WHO表現型分類Ⅳ型・遺伝形式AD=家族性Ⅳ型高脂血症
- WHO表現型分類Ⅴ型とⅠ型・遺伝形式AR=家族性LPL欠損症とアポC-2欠損症
というように分類できます。
※FH:familial hypercholesterolemia
※FCHL:familial combined hyperlipidemia
家族性高コレステロール血症はLDL受容体の異常によってⅡ型高脂血症をきたします。
家族性高コレステロール血症の診断基準
- ①高LDLコレステロール血症
- ②家族歴(FHまたは冠動脈疾患)
- ③黄色腫(腱黄色腫または皮膚結節性黄色腫)
以上の診断基準は前章と結びつけ、
- Ⅱ型→LDL増加→①
- Ⅱ型→AD→②
- Ⅱ型→増加したLDLをマクロファージが貪食し腱や皮膚に集積し黄色腫を形成→③
と考えると分かりやすいです。
続発性高脂血症(二次性高脂血症)
続発性高脂血症の原因は
- 体内での生産が亢進
- 細胞内への取り込みが低下
- 細胞外への漏出
- 体外への排出が低下
の4つに分類できます。
体内での生産が亢進
- アルコール
- 高エネルギー食
- 2型糖尿病
- 先端巨大症
- クッシング症候群
- ネフローゼ症候群
- エストロゲン投与
アルコールはアセチルCoAに分解されTG・コレステロールの生産に使われます。
高エネルギー食や先端巨大症・クッシング症候群で増加した糖も同様に、
アセチルCoAに変換され、TG・コレステロールの生産に使われます。
先端巨大症の成長ホルモンには脂質を分解して
血中に増やす働きもあります。
糖尿病は
- 1型糖尿病→インスリンが作用する→LDL取り込める→LDL正常
- 2型糖尿病→インスリン抵抗性→LDL取り込めない→LDL増加
という違いがありますが、
2型糖尿病と脂質異常症は生活習慣病なので合併しやすいと考え、
2型糖尿病ではLDL増加・対照的に1型糖尿病ではLDL正常と覚えましょう。
ネフローゼ症候群では低下したアルブミンを生産しようと肝代謝が活発化、
エストロゲン投与ではエストロゲンを分解するために肝代謝が活発化します。
肝代謝が活発になると同時にTG・コレステロールを生産してしまいます。
細胞内への取り込みが低下
- 甲状腺機能低下症
- 神経性食思不振症
甲状腺機能低下では、
- 肝臓でのLDL受容体の発現が低下しLDLが取り込み低下
- 胆汁酸の生産が低下し脂質の排出が低下
などによってコレストロールが増加すると言われています。
細胞外への漏出
- 膵炎
高TG血症が原因となり膵炎を発症するパターンと膵炎となり高TG血症になるパターンの両方があり得ます。
特に、Ⅰ型とⅤ型の高CM血症・高TG血症では膵炎の頻度は高く注意が必要です。
高TG血症⇔膵炎 ともに誘発因子
体外への排出が低下
- 閉塞性黄疸・原発性胆汁性胆管炎・肝癌など(黄疸をきたす疾患系)
コレステロールは胆汁中に排出されるので、胆管の閉塞では排出できず増加します。
【確認問題】医師国家試験に挑戦
まだ覚えていない人がいたら、こちらを必ず覚えましょう。
98H63
カイロミクロンが増加する高脂血症はどれか。
2つ選べ。
a Ⅰ型
b Ⅱa型
c Ⅲ型
d Ⅳ型
e Ⅴ型
答え ae
111E17
遠心分離した血液検体を別に示す。
この検体が示唆するのはどれか。
a HDLの増加
b LDLの増加
c リン脂質の増加
d 遊離脂肪酸の増加
e カイロミクロンの増加
答え e
検体の血清がクリーム色(乳白色)になっている状態を乳び(乳糜・乳び血清など)と言い、
CM(TG)が増加していることを示す。
【110B16】では「LDLコレステロールの著増は乳び血清をきたす。→×」という選択肢があった。
83B13
Ⅰ型高脂血症について正しいのはどれか。
2つ選べ。
a 血清白濁
b 血清VLDL増加
c 血清カイロミクロン増加
d 常染色体劣性遺伝
e 成人発症
答え cd
CM単独上昇ではクリーム色になる。
VLDLが増加するのはⅡbとⅣとⅤ。
遺伝性疾患は成人発症ではなく、若年(15歳~34歳)までに発症することが多い。
102E53
32歳の男性。会社の健康診断で血清脂質異常を指摘されて来院した。父は40歳で突然死した。姉に高コレステロール血症がある。身長170cm、体重61kg。右上眼瞼内側に黄色い皮腫を認める。健康診断時の血清総コレステロール320mg/dL,トリグリセライド120 mg/dL。
この疾患にみられるのはどれか。2つ選べ。
a 白内障の合併
b Ⅰ型高脂血症
c 常染色体優性遺伝
d HDLレセプター欠損
e 虚血性心疾患の合併
答え ce
父・姉・患者といった集積するのはADなので、この時点でⅡ型かⅣ型。
総コレステロールが高値なのでⅣ型ではなく、TGが正常なのでⅡa型と分かる。
黄色腫もあり、Ⅱa型の家族性高コレステロール血症が考えやすい。
※実際の家族性高コレステロール血症の診断基準に眼瞼黄色腫は入っておらず、腱黄色腫か皮膚結節性黄色腫が必要。
101H21
53歳の女性。健康診査で脂質異常症を指摘されて来院した。喫煙習慣と飲酒習慣とはない。父が脳卒中で死亡している。身長160cm、体重67kg,腹囲86cm。脈拍76/分、整。血圧142/90mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。尿所見:タンパク(-)、糖(-)。血清生化学所見:空腹時血糖128mg/dL、総コレステロール246mg/dL、LDL-コレステロール159mg/dL(基準60~140)、HDL-コレステロール54mg/dL、トリグリセリド156mg/dL。心電図では上室性期外収縮が散発している。
対応として適切なのはどれか。2つ選べ。
a 生活指導
b 血糖降下薬の投与
c スタチン系薬の投与
d フィブラート系薬の投与
e 3か月後の血清生化学検査
答え ae
TC増加・LDL増加・TG微増よりⅡb型家族性高コレステロール血症の疑い。
心電図異常を伴っており今すぐ薬物治療を始めたい気持ちになるが、既往もないため、
まず①生活習慣の改善を行い3~6か月後に再検査を実施、
3~6か月間行っても目標に達成しない場合②薬物治療の追加を行う。
88E44
28歳の女性。6か月前から月に1,2回腹痛を訴えていた。3週前,両側の肘に黄色の皮疹があるのに気付き来院した。そのときの血清生化学所見(空腹時):血糖120mg/dL,総コレステロール270mg/dL,トリグリセリド2,870mg/dL。今朝から冷汗を伴う腹部の激痛を訴え救急車で運ばれてきた。
まず考えるべき疾患はどれか。
a 胆石症
b 急性膵炎
c 大動脈解離
d 尿路結石症
e 腸間膜動脈閉塞症
答え b
acdeを完全に否定はできないが、高TG血症→急性膵炎を連想させる問題。
Ⅰ型とⅤ型に多い。
114C28
血清LDLコレステロール値が上昇する原因として正しいのはどれか。2つ選べ。
a 肝硬変
b 1型糖尿病
c 吸収不良症候群
d 甲状腺機能低下症
e ネフローゼ症候群
答え de
a 肝機能低下にてLDLは減少する。
bdeについては記事参照
c 吸収不良では材料不足でLDLは減少する。
93B86
高コレステロール血症をきたすのはどれか。
3つ選べ。
a 神経性食思不振症
b 甲状腺機能亢進症
c 劇症肝炎
d 原発性胆汁性胆管炎
e ネフローゼ症候群
答え ade
c 肝機能低下にてコレステロールは低下する。
終わりに
お疲れさまでした。
参考になれば幸いです。
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