クッシング症候群の特徴が多すぎて覚えられない。
何か良い覚え方・ゴロを教えて欲しい。
こういった悩みを解決します。
本記事では病態を徹底的に解説して、たくさんあるクッシング症候群の特徴を導けるようにします。
覚えることを最小限にして乗り越えよう!
クッシング症候群の特徴・症状・合併症の覚え方・ゴロ【CBT国試対策】
絶対に覚えるべきこと:クッシング症候群は糖質コルチコイド(コルチゾール)分泌が増える
この記事で覚えられるクッシング症候群の特徴
- 近位筋優位の筋委縮
- 皮膚の非薄化
- 伸展性赤色皮膚線状
- 浮腫
- 出血斑(皮下溢血)
- 高血糖(耐糖能異常・二次性糖尿病)
- 脂質異常症(高脂血症)
- 満月様顔貌
- 水牛様脂肪沈着(buffalo hump)
- 中枢性肥満
- 無月経
- 多毛
- 尋常性ざ瘡(ニキビ)
- 高血圧
- 低カリウム血症
- 骨粗鬆症・尿路結石(尿中カルシウム増加)・尿量増加
- 白血球増加・好中球増加・好酸球比率低下・リンパ球比率低下
- 易感染性
- 精神症状・症状性精神障害(抑うつ)
なぜクッシング症候群で筋委縮・伸展性赤色皮膚線状・浮腫・高血糖?【理由-機序】
コルチゾールは別名「糖質コルチコイド」です。
つまり、①タンパク質を分解して②糖質(グルコース)に変換する作用があります。
基礎医学の復習
タンパク質が分解され糖原性アミノ酸(糖を作る材料のアミノ酸)が増加し、
糖原性アミノ酸はクエン酸回路(オキサロ酢酸)→解糖系の順でグルコースになる。
①コルチゾールのタンパク質分解作用
- 筋肉が分解されると近位筋優位の筋委縮
- 皮膚のタンパク質が分解されると皮膚の非薄化
- さらに分解が進むと、皮膚が薄く引き伸ばされ血管が見えやすくなり伸展性赤色皮膚線条
- 血管壁のタンパク質が分解されると血管透過性亢進による浮腫・出血斑(皮下溢血)
コルチゾールへの感受性の違いで近位筋が萎縮しやすい。
覚え方として、「キンキンの原則」って有名だね。
キンキン=キン(筋)の障害はキンイ(近位)筋に優位に現れる。
逆に神経の障害は遠位筋に優位に現れる。
②コルチゾールによって糖質(グルコース)が増える
- 血中に糖が増え高血糖(耐糖能異常・二次性糖尿病)
なぜクッシング症候群で満月様顔貌・水牛様脂肪沈着・中枢性肥満?【理由-機序】
コルチゾール作用によって増加した糖は解糖系でピルビン酸、さらにアセチルCoAに変換され、
コレステロール合成・脂肪合成に使われます。=脂質異常症(高脂血症)
糖はインスリン感受性(中枢で感受性は高く・末梢では低い)の違いによって、
体の中枢(顔・肩・体幹)の細胞に多く取り込まれ、脂肪に変換されます。
したがって、
- 顔に脂肪が溜まると満月様顔貌
- 肩に脂肪が溜まると水牛様脂肪沈着(buffalo hump)
- 体幹に脂肪が溜まると中枢性肥満
という症状が現れます
なぜクッシング症候群で無月経・多毛・尋常性ざ瘡(ニキビ)?【理由-機序】
クッシング症候群の原因は
- クッシング病(下垂体腺腫によるACTH増加)
- 異所性ACTH分泌腫瘍(肺小細胞癌・膵腺腫・気管支カルチノイドによるACTH増加)
- 副腎腺腫
- 副腎癌
の4種類に分類されます。
クッシング病(下垂体腺腫)と
異所性ACTH分泌腫瘍(肺小細胞癌・膵腺腫・気管支カルチノイド)では、
ACTHによってコルチゾール以外にアンドロゲン(男性ホルモン)も増加します。
副腎腺腫はコルチゾールを生産する束状層に限局するためアンドロゲンは増えませんが、
副腎癌では束状層以外だけでなく、アンドロゲンを生産する網状層まで広がり増殖するのでアンドロゲンが増加します。
したがって、副腎腺腫以外のクッシング病・異所性ACTH分泌腫瘍・副腎癌では、
アンドロゲン増加による無月経・多毛・尋常性ざ瘡(ニキビ)が起こります。
なぜクッシング症候群で高血圧・低カリウム血症?【理由-機序】
結論:コルチゾールのアルドステロン作用によって高血圧・低カリウム血症が起こる。
少し復習のお話
ステロイドにはいくつか種類がありますが、
絶対に覚えるべきは3つ(デキサメタゾン・ヒドロコルチゾン・プレドニゾロン)です。
これらの作用をヒドロコルチゾンを基準に表記すると下記のようになります。
- デキサメタゾン
コルチゾール作用:アルドステロン作用=25:0.01 - ヒドロコルチゾン
コルチゾール作用:アルドステロン作用=1:1 - プレドニゾロン
コルチゾール作用:アルドステロン作用=4:0.8
以上から分かるように、ステロイドはコルチゾール作用に加えてわずかにアルドステロン作用を持ちます。
つまり、クッシング症候群で増加するステロイドも同様にわずかにアルドステロン作用があるため、
- ナトリウム再吸収による高血圧
- カリウム排出による低カリウム血症
が起こります。
まとめると、クッシング症候群では
高血圧・高血糖・脂質異常症の生活習慣病3兄弟がそろっちゃうんだね。
高血圧により腎血流が増え、レニンは低下し、本家アルドステロンは抑制されることが多いです。
- クッシング症候群の浮腫はコルチゾールのアルドステロン作用によるものでは?
-
確かに「アルドステロン作用のナトリウム再吸収による体液増加」は機序として考えられます。
しかし、アルドステロン症自体で浮腫は見られにくいため、
コルチゾールのタンパク質分解作用と結び付けて覚えるのをオススメします。
なぜクッシング症候群で骨粗鬆症・尿路結石・尿量増加?【理由-機序】
結論:コルチゾールは骨形成を抑制し骨吸収を促進するため。
コルチゾールは骨芽細胞・骨細胞のアポトーシスを促進させ、
破骨細胞のアポトーシスを抑制することで骨吸収を促進する(=骨粗鬆症)。
さらに、コルチゾールは骨から漏れ出したカルシウムを尿中に排泄する作用(尿中カルシウム増加)があり、
尿路結石が起こる。
※骨からのカルシウム増加と尿中へカルシウム排出のバランスによって血中カルシウムは正常になることが多い。
また、クッシング症候群では
- 浸透圧利尿
- コルチゾールのADH拮抗作用
によって尿量が増加します。
なぜクッシング症候群で白血球増加(好中球増加・好酸球減少)・易感染性?【理由-機序】
免疫の白血球が増加しているのに、易感染性っておかしくない?
この悩みはコルチゾールの作用を理解することで覚えられます。
コルチゾールは「血管内から血管外(組織)への好中球の遊走を阻害する作用(抗炎症作用)」があります。
つまり、コルチゾールが増加するクッシング症候群では、
白血球の大部分を占める好中球が血管内に溜まり(白血球増加・好中球増加・好酸球比率低下・リンパ球比率低下)、
好中球は末梢の組織に遊走できず易感染性となります。
副腎皮質ステロイド(コルチゾール)の副作用として、
感染症が有名だよね?
そうだね!
組織に好中球が遊走できなくなるから感染しやすくなるんだね。
なぜクッシング症候群で精神症状・症状性精神障害(抑うつ)?【理由-機序】
クッシング症候群のコルチゾール増加に伴い
海馬の体積減少や視床下部・下垂体・副腎皮質系(HPA系)の機能不全によって
精神症状・症状性精神障害(抑うつ)が起こると言われています。
しかし、詳細な機序についてはまだ解明されていないので、試験的に生かせる覚え方をしましょう。
考え方:副腎皮質ステロイドの有名な副作用はうつ(薬剤性うつ)
『ステロイドの副作用に「うつ」があったから
クッシング症候群でも「うつ」が起こるかも』と連想しよう!
老年医学の分野で薬剤性うつの原因の覚え方・ゴロを紹介します!
お待ちください。
確認問題:医師国家試験【105I78】に挑戦!
Cushing症候群でみられないのはどれか。
a 多毛
b 高血圧
c 低血糖
d 易感染性
e 骨粗鬆症
f 精神障害
g 中心性肥満
h 満月様顔貌
答えは c
終わりに
お疲れ様でした。
参考になれば幸いです。
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