血漿鉄消失時間PIDT1/2と赤血球鉄利用率%RCUについて教えてほしい。
こういった悩みを解決します。
本記事では鉄動態(フィロカイネティクス)で重要な血漿鉄消失時間PIDT1/2と赤血球鉄利用率%RCUの説明に加えて、
試験で大切な鑑別疾患をまとめます。
血漿鉄消失時間PIDT1/2とは?【鑑別疾患まとめ】
血漿鉄消失時間(PIDT1/2:plasma iron disappearance time)とは、「骨髄での鉄の需要を示す値」です。
放射性標識鉄59Feを静注して、血漿から骨髄の造血細胞に取り込まれるのにかかる時間を測定します。
通常は静注後の血漿濃度が半分(1/2)になるまで時間を測定し、その時間が血漿鉄消失時間PIDT1/2となります。
健常者の血漿鉄消失時間PIDT1/2は60~120分です。
骨髄での鉄の需要が多ければ、より多くの放射性標識鉄59Feが骨髄に取り込まれるため、血漿鉄消失時間PIDT1/2は短縮し、
骨髄での鉄の需要が少なければ、放射性標識鉄59Feが骨髄に取り込まれづらいため、血漿鉄消失時間PIDT1/2延長します。
言い換えると、血漿鉄消失時間PIDT1/2は骨髄での鉄の需要=赤血球生産能の指標となります。
血漿鉄消失時間PIDT1/2が延長する鑑別疾患
血漿鉄消失時間PIDT1/2が延長する鑑別疾患
- 造血能力が低下する疾患(再生不良性貧血・赤芽球癆・腎性貧血)
再生不良性貧血と赤芽球癆と腎性貧血では骨髄の造血能力が低下しており、
骨髄での鉄の需要が少ないため、材料の鉄を補充しても意味は無く、血漿鉄消失時間PIDT1/2が延長します。
血漿鉄消失時間PIDT1/2が短縮する鑑別疾患
血漿鉄消失時間PIDT1/2が短縮する鑑別疾患
- ①血清鉄が低値の疾患(鉄欠乏性貧血・慢性疾患に伴う貧血)
- ②無効造血(骨髄異形成症候群・サラセミア・鉄芽球性貧血・巨赤芽球性貧血)
- ③溶血性貧血
血管内溶血
:発作性夜間ヘモグロビン尿症PNH・発作性寒冷ヘモグロビン尿症PCH・G6PD欠損症・赤血球破砕症候群・ABO不適合輸血
血管外溶血
:遺伝性球状赤血球症HS・温式AIHA(自己免疫性溶血性貧血)・サラセミア・PK欠損症・鎌状赤血球症
①血清鉄が低値の疾患(鉄欠乏性貧血・慢性疾患に伴う貧血)では、
骨髄の造血能力は正常であり単に血清鉄が足りないだけなので、
鉄が補充されれば即消費され血漿鉄消失時間PIDT1/2が短縮します。
②無効造血※では、赤血球をたくさん作ってたくさん壊します(溶血)。
たくさん作るために骨髄での鉄の需要は増えているので、
鉄が補充されれば即消費され血漿鉄消失時間PIDT1/2が短縮します。
※骨髄異形成症候群・サラセミア・鉄芽球性貧血・巨赤芽球性貧血
③溶血性貧血※では、赤血球が溶血によりたくさん壊されてしまうため、
代償的に造血が盛んになり鉄の需要は増えているので、
鉄が補充されれば即消費され、血漿鉄消失時間PIDT1/2が短縮します。
※血管内溶血・血管外溶血ともに(疾患の覚え方・ゴロについては下記参照↓↓↓)
赤血球鉄利用率%RCUとは?【鑑別疾患まとめ】
赤血球鉄利用率(%RCU:red cell iron utilization)とは、「造血の効率を示す値」です。
放射性標識鉄59Feを静注し経時的に採血をして、末梢血中の赤血球の何%に放射性標識鉄59Feが取り込まれているかを測定します。
健常者では一週間後に80~100%となります。
骨髄の造血能力が正常で、かつ溶血が無い(無効造血・溶血が起こらない)場合に正常となります。
赤血球鉄利用率%RCUが上昇する鑑別疾患
赤血球鉄利用率%RCUが上昇する鑑別疾患
- 血清鉄が低値の疾患(鉄欠乏性貧血・慢性疾患に伴う貧血)
血清鉄が低値の疾患(鉄欠乏性貧血・慢性疾患に伴う貧血)では、
貧血を是正しようとして骨髄の造血能力は上昇しており、かつ無効造血・溶血が起こらないので、
鉄があれば十分に放射性標識鉄59Feは利用され赤血球鉄利用率%RCUが上昇します。
赤血球鉄利用率%RCUが低下する鑑別疾患【無効造血と溶血性貧血】
赤血球鉄利用率%RCUが低下する鑑別疾患
- ①無効造血(骨髄異形成症候群・サラセミア・鉄芽球性貧血・巨赤芽球性貧血)
- ②溶血性貧血
血管内溶血
:発作性夜間ヘモグロビン尿症PNH・発作性寒冷ヘモグロビン尿症PCH・G6PD欠損症・赤血球破砕症候群・ABO不適合輸血
血管外溶血
:遺伝性球状赤血球症HS・温式AIHA(自己免疫性溶血性貧血)・サラセミア・PK欠損症・鎌状赤血球症 - 造血能力が低下する疾患(再生不良性貧血・赤芽球癆・腎性貧血)
①②無効造血や溶血が起こると、放射性標識鉄59Feが含まれるヘモグロビンは赤血球外に漏れ出し代謝され、
利用されない状態(効率が悪い状態)になってしまうため、赤血球鉄利用率%RCUが低下します。
③造血能力が低下する疾患では、そもそも作れないため、
材料の鉄を補充しても取り込まれず赤血球鉄利用率%RCUが低下します。
以上をまとめると、
血漿鉄消失時間PIDT1/2と赤血球鉄利用率%RCUで
貧血性疾患を分類できます。
血漿鉄消失時間PIDT1/2と赤血球鉄利用率%RCUによる貧血の分類
血漿鉄消失時間PIDT1/2 | 赤血球鉄利用率%RCU | |
---|---|---|
【血清鉄が低値の疾患】 鉄欠乏性貧血 慢性疾患に伴う貧血 | 短縮 鉄入れれ消費される | 上昇 RBC無事に末梢に現れる |
【無効造血】 骨髄異形成症候群 サラセミア 鉄芽球性貧血 巨赤芽球性貧血 【溶血性貧血】 ・血管内溶血 発作性夜間ヘモグロビン尿症PNH 発作性寒冷ヘモグロビン尿症PCH G6PD欠損症 赤血球破砕症候群 ABO不適合輸血 ・血管外溶血 遺伝性球状赤血球症HS 温式AIHA(自己免疫性溶血性貧血) サラセミア PK欠損症 鎌状赤血球症 | 短縮 鉄入れれば消費される (けど壊される) | 低下 RBC壊され鉄消える |
【造血能力が低下する疾患】 再生不良性貧血 赤芽球癆 腎性貧血 | 延長 鉄入れても取り込まれない | 低下 そもそもRBC末梢に現れない |
血漿鉄消失時間PIDT1/2短縮かつ赤血球鉄利用率%RCU低下を
「無効造血パターン」と言ったりします。
血管内溶血と血管外溶血の違いや共通点を総まとめしました!
コチラを参照してください↓↓↓
終わりに
お疲れさまでした。
参考になれば幸いです。
『血液』の範囲の覚え方×ゴロ×イラストをまとめました!
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