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【研修医向け】便秘薬・下剤の使い分け【一覧・作用機序・薬価まとめ】

下剤・便秘薬 一覧
目次:クリックで飛べます。

① 便秘の原因と診断ステップ

慢性便秘の診療では、薬物療法を開始する前に「二次性便秘(器質的・薬剤性・症候性)」を除外することが重要である。特に下記の危険因子・警告症状がある場合は、大腸内視鏡検査を優先する。

慢性便秘症の原因となりうる基礎疾患

大腸内視鏡検査の適応(慢性便秘症診療ガイドライン2023)

以下の①②③のいずれかが1項目でも該当する場合、大腸内視鏡検査を推奨する

  • ① 危険因子:50歳以上で発症 / 大腸器質的疾患の既往または家族歴
  • ② 警告症状:排便習慣の急激な変化 / 血便・発熱・関節痛 / 6か月以内の予期せぬ3kg以上の体重減少
  • ③ 臨床検査異常所見:貧血 / 便潜血陽性

② 下剤・便秘薬の種類と薬価一覧

下剤・便秘薬は大きく「ベース薬(毎日内服してコントロールする薬)」と「レスキュー薬(便秘時に頓用する薬)」に分けて考えると整理しやすい。ベース薬はさらに従来型と新規薬に分かれる。

ベース薬(従来型・浸透圧下剤)

腸管内の浸透圧を高めて水分を引き込み、便を軟化させる。安価で長年の使用実績があり、第一選択として広く用いられる。

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薬剤名(商品名)成分・分類用法薬価/日(概算)
酸化マグネシウム錠(マグミット®250mg/330mg)酸化マグネシウム・塩類下剤750〜2000mg/日(分3)食後または就寝前約17円(750mg/日時)
マクロゴール4000(モビコール®配合内用剤LD/HD)ポリエチレングリコール(PEG)製剤LD: 1〜3包/日、HD: 1〜2包/日 水に溶かして内服約71〜264円(LD 1包71円/包、HD 1包132円/包)
ラクツロース(ラグノス®NF経口ゼリー66.5%)ラクツロース・糖類下剤1回24g(1包)× 2回/日 食後約170円(2包/日)

注意点:酸化マグネシウムは長期服用・腎機能障害・高齢者で高マグネシウム血症のリスクがある。また、多数の薬剤との相互作用がある(後述)。

ベース薬(新規薬)

腸管への水分分泌促進・蠕動運動促進に働く新世代の下剤。従来薬より高価だが、腎機能障害患者にも使いやすいものが多い。

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薬剤名(商品名)成分・分類用法薬価/日(概算)
ルビプロストン(アミティーザ®カプセル12μg/24μg)クロライドチャネル(ClC-2)賦活薬12〜24μg × 2回/日 食後(空腹時は悪心が出やすい)約111円(12μg×2)/ 約220円(24μg×2)
エロビキシバット(グーフィス®錠5mg)IBAT(回腸胆汁酸トランスポーター)阻害薬10mg/日 食前30分以内(胆汁酸分泌に合わせるため)約188円
リナクロチド(リンゼス®錠0.25mg)グアニル酸シクラーゼC(GC-C)受容体作動薬0.5mg/日 食前(食後投与では効果減弱)約157円
ナルデメジン(スインプロイク®錠0.2mg)末梢性μオピオイド受容体拮抗薬(PAMORA)0.2mg/日 食前後いずれでも可約272円

注意点:スインプロイクはオピオイド誘発性便秘症(OIC)のみ適応。オピオイド非使用患者への処方は保険適応外。リナクロチドは便秘型IBS(IBS-C)にも適応がある。

レスキュー薬

便秘時の頓用として使用する。即効性があるが、長期連用で耐性・依存が生じやすい。定期的なベース薬で便をコントロールし、レスキューに頼る頻度を減らすことが理想的。

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薬剤名(商品名)成分・分類用法薬価/回(概算)
センノシド錠(プルゼニド®12mg / アローゼン®顆粒)センノシドA・B・カルシウム塩(アントラキノン系)12〜48mg 就寝前頓用約10円(2錠)
ピコスルファートNa錠(ラキソベロン®2.5mg)ピコスルファートナトリウム(ジフェニール系)2.5〜7.5mg 就寝前頓用約12円(2錠)
ピコスルファートNa液(ラキソベロン®液0.75%)同上(液剤)10〜15滴 就寝前頓用約18円(10滴/0.5mL)
ビサコジル坐薬(テレミンソフト®坐薬2mg/10mg)ビサコジル(ジフェニール系・外用)1個を直腸内に挿入約22円(2mg)/ 約122円(10mg)
炭酸水素Na・無水リン酸二水素Na(新レシカルボン®坐剤)炭酸ガス発生型坐薬1〜2個を直腸内に挿入約28円/個
グリセリン浣腸(各種)グリセリン(浸透圧・潤滑性)30〜60mL を直腸内に注入約110円(30mL)

薬価は2024年度薬価基準に基づく概算値。用量により費用は変動する。

③ 便秘薬・下剤の使い分け

慢性便秘症診療ガイドライン2023(日本消化器病学会)では、生活習慣指導とともに薬物療法を組み合わせることが推奨されている。

ベース薬の選び方

  • 第一選択:酸化マグネシウム(マグミット) 安価・実績豊富。腎機能が正常な患者の大多数に使いやすい
  • 腎機能障害(eGFR <30程度)または高齢者:モビコール(マクロゴール) 腎排泄に依存しないため高Mg血症のリスクなし。海外ガイドラインでは第一選択。日本でも腎障害患者には積極的に選択する
  • 酸化Mg・モビコールで効果不十分:グーフィス or アミティーザ 新規薬への変更または上乗せを検討。グーフィスは食前投与(忘れやすい点に注意)。アミティーザは食後投与で悪心が少ない
  • 便秘型IBS(IBS-C):リンゼス GC-C受容体作動薬で腹痛を伴う便秘に特に有効。IBSの腹痛にも効果あり
  • オピオイド使用中の便秘(OIC):スインプロイク PAMORAとして末梢μ受容体を選択的に拮抗し、中枢性鎮痛効果を損なわず腸管運動を回復させる。OIC以外には適応なし
  • 肝性脳症に伴う便秘:ラクツロース(第一選択) 腸内細菌に分解されて有機酸となり腸管内pHを低下させる。pHが低下するとアンモニアは吸収されにくいアンモニウムイオン(NH₄⁺)に変化し、血中アンモニア値を低下させる。便秘改善とアンモニア低下を同時に期待できる点がほかの下剤にはない特徴

酸化マグネシウムと腎機能障害

eGFRと血清Mgは直線的に相関しないため、明確なエビデンスのあるカットオフは存在しない。高齢者、脱水、腎機能障害、長期投与が高Mg血症のリスクであり、定期的な血清Mg濃度を測定が推奨される。エキスパートオピニオンとしては下記が参考になる。
CKD eGFR Grade
G1/G2:通常量で開始可能
G3a:330mg3t3xへ減量し開始可能
G3b:モビコールやアミティーザやグーフィスを第一選択とする。
G4/5:使用しない

レスキュー薬の使い方

  • 内服レスキュー(センノシド・ピコスルファート) 就寝前に服用し翌朝に排便を促す。効果発現まで6〜12時間。週2〜3回以内を目安とし、毎日使用が必要な状況ではベース薬を強化する
  • 坐薬(テレミンソフト・新レシカルボン) 直腸内に挿入して局所的に刺激。効果発現15〜60分。内服が困難な患者・術後や絶食中の患者にも使用可
  • 浣腸(グリセリン浣腸) 最も即効性が高い(5〜15分)。高齢者や心疾患患者では迷走神経反射による徐脈・失神に注意。立位・座位での施行は避け、左側臥位で行う

座薬の効果はグリセリン浣腸>テレミンソフト坐薬>新レシカルボンの印象。
今すぐに症状緩和が必要であればグリセリン浣腸&摘便。

④ 便秘薬・下剤の作用機序と副作用

浸透圧下剤

腸管内の浸透圧を高め、水分を腸管内に引き込むことで便を軟化・増量させる。腸管蠕動への直接作用は弱い。

  • 酸化マグネシウム(塩類下剤):Mg²⁺が腸管内でMgCO₃・Mg(OH)₂となり浸透圧を上昇させる。腎排泄のため、腎障害時は高Mg血症(悪心・嘔吐・筋力低下・房室ブロック)に注意。定期的に血清Mg値をモニタリングする。薬物相互作用に要注意:ニューキノロン系抗菌薬・ビスホスホネート製剤・テトラサイクリン系抗菌薬と難溶性キレートを形成し吸収が著しく低下する。これらとの内服間隔を2〜4時間空ける必要がある。また、PPI・P-CABによる胃酸分泌抑制で酸化マグネシウムの溶解が妨げられ、効果が減弱することがある
  • マクロゴール(PEG製剤):高分子量の非吸収性ポリエチレングリコールが腸管内に水分を保持。全身吸収されないため全身性副作用が少ない。電解質異常のリスクも低く、腎障害・高齢者にも安全に使用できる
  • ラクツロース(糖類下剤):非吸収性の二糖類。腸内細菌によって有機酸・CO₂・H₂に分解され浸透圧を上げる。肝性脳症では腸管内pHを低下させてアンモニアをNH₄⁺に変換し血中アンモニア低下に寄与する(詳細は③参照)。副作用として腹部膨満感・放屁が生じやすい

新規薬剤の作用機序

  • エロビキシバット(IBAT阻害薬):回腸末端の胆汁酸トランスポーター(IBAT:ileal bile acid transporter)を阻害し、胆汁酸の再吸収を抑制する。大腸内に流入した胆汁酸が①大腸粘膜からの水・電解質分泌促進と②大腸蠕動運動促進の両方に働く。食前30分以内に服用(胆汁酸分泌のタイミングに合わせるため)。副作用として腹痛・下痢が比較的多い
  • ルビプロストン(Clチャネル賦活薬):小腸上皮細胞のクロライドチャネル(ClC-2)を活性化し、腸管内腔へのCl⁻分泌を促進。これに伴いNa⁺・水が腸管内腔へ移動し、便の軟化・腸管蠕動促進が起きる。全身吸収がほとんどなく、腎障害患者にも用量調整不要で使いやすい。副作用は悪心(特に空腹時)
  • リナクロチド(GC-C受容体作動薬):小腸・大腸粘膜のグアニル酸シクラーゼC受容体を活性化し、cGMPを増加させる。cGMPはCFTRを介した腸管内腔へのCl⁻・HCO₃⁻分泌を促進し、腸管内水分量を増やす。また、cGMPは腸管求心性神経のNa⁺チャネルを抑制し、腹痛・腹部不快感を改善する効果もある(IBS-Cへの適応根拠)。副作用は下痢
  • ナルデメジン(PAMORA):末梢組織のμオピオイド受容体を選択的に拮抗する。血液脳関門を通過しにくい構造のため、中枢性の鎮痛効果を保ちながら腸管のオピオイド受容体拮抗によりOICを改善する。オピオイド使用中断により効果消失。副作用は腹痛・下痢・悪心

大腸刺激性下剤(レスキュー薬)

大腸粘膜を直接刺激して蠕動運動を亢進させる。速効性があるが、慢性連用で問題が生じる。

  • センノシド(アントラキノン系):大腸内細菌によってセンノシドAがレインアンスロンに変換され、大腸粘膜に作用して蠕動を亢進させる。長期連用で大腸メラノーシス(大腸黒皮症 melanosis coli)が生じる。大腸メラノーシス自体は可逆的だが、大腸神経叢への障害(Auerbach神経叢の変性)による蠕動低下・耐性・依存が問題となる
  • ピコスルファートナトリウム(ジフェニール系):大腸内細菌(Bacteroides)によってDPHGに代謝されて活性化し、大腸蠕動を亢進させる。センノシドと類似した機序。液剤は用量調整が容易
  • ビサコジル坐薬(ジフェニール系・外用):直腸粘膜に直接作用して蠕動を亢進させる。全身吸収が少なく、内服困難な患者や術後・絶食中の患者にも使用可能

【大腸刺激性下剤の長期連用リスク】慢性使用は①耐性(効果減弱)→増量→依存②大腸神経叢への障害(低蠕動性大腸)③電解質異常(低K血症)を引き起こす可能性がある。頓用の原則を守り、毎日の使用が必要な状況ではベース薬の増量・変更を行う。

⑤ 漢方薬の使い分け

漢方薬は慢性便秘症において補助的に用いられる。症状のパターンによって選択する薬が異なるため、以下を目安にする。

症状パターン推奨漢方薬
腹部膨満感を伴う便秘大建中湯
コロコロとした乾燥便・高齢者麻子仁丸
腹痛を伴う便秘桂枝加芍薬大黄湯 / 桂枝加芍薬湯
頓用として排便を促したい大黄甘草湯

各漢方薬の特徴

  • 大建中湯:麻痺性イレウスに保険適応があるが、腹部膨満感+便秘にも広く使用される。山椒の消化管運動亢進作用が主体
  • 麻子仁丸:コロコロとした乾燥便で腹痛を伴う便秘に有効。大黄(大黄甘草湯と同量)に加え、脂肪油・精油を含む麻子仁による便軟化作用と芍薬の鎮痛鎮痙作用を持つ。甘草を含まないため偽性アルドステロン症のリスクが低いことが利点
  • 桂枝加芍薬大黄湯・桂枝加芍薬湯:腹痛を伴う便秘に用いる。他の処方より芍薬の含有量が多く、鎮痙・鎮痛作用が強い。大黄を含む「大黄湯」は瀉下作用あり、含まない「桂枝加芍薬湯」は腸管スパズムの緩和が主体
  • 大黄甘草湯:酸化マグネシウムやセンノシド不応性の慢性便秘症にエビデンスがある。主成分の大黄はセンノシドを高容量含み強い瀉下作用を持つ。甘草の抗炎症作用、飲みやすい甘味がある。甘草を含むため偽性アルドステロン症(低K血症・高血圧・浮腫)に注意し、長期投与時は電解質モニタリングを行う

参考文献

  1. 慢性便秘症診療ガイドライン2023(日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診療ガイドライン作成委員会)
  2. Fukudo S, et al. Evidence-based clinical practice guidelines for irritable bowel syndrome 2020. J Gastroenterol. 2021;56(3):193-217.
  3. Drossman DA, et al. Rome IV—Functional GI Disorders: Disorders of Gut-Brain Interaction. Gastroenterology. 2016;150(6):1257-1261.
  4. 令和6年度薬価基準(厚生労働省)※薬価は概算値
病気がみえる(vol.6) 免疫・膠原病・感染症 [ 医療情報科学研究所 ]
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参考

終わりに

お疲れさまでした。参考になれば幸いです。

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