急性腎不全の腎前性・腎性・腎後性の鑑別って難しい。
原因もたくさんあって覚えにくい。
こういった悩みを解決します。
本記事では
- 腎不全(腎前性-腎性-腎後性)の原因と機序
- 腎前性-腎性-腎後性の鑑別
について詳しく解説します。
最後に確認問題として医師国家試験問題を用いて鑑別を演習しましょう。
たくさん演習してマスターできるようにしたよ!
かなり本格的に作った記事なので
大船に乗ったつもりで安心して進もう!
大変だけど頑張ろうね!
【事前知識】急性腎不全と急性腎障害の違い・定義・分類【腎前性-腎性-腎後性】
急性腎不全は急激な腎機能低下により
- 代謝性アシドーシス
- 高カリウム血症
- Cr上昇・BUN上昇
- 乏尿~無尿による体重増加
- 尿毒症症状(皮膚掻痒感・貧血・脳症による意識障害など)
をきたす病態です。
このような急性腎不全になる前に早期介入する目的で
新たな分類(AKIN分類・RIFILE分類・KDIGO分類(知らなくて良い分類))を作り、
急性腎障害という概念を提唱しました。
急性腎障害の定義 ←クリックで参照
「48 時間以内に血清クレアチニン値が0.3 mg/dL以上または1.5 倍以上に上昇すること」
または
「尿量 0.5 mL/kg/hr以下が6時間以上持続すること」
これを簡略化すると、急性腎障害AKI:acute kidney injury は
- クレアチニンCrの急激な上昇
または - 尿量の急激な減少
と定義できます。
医師国家試験【116A15】に出題されました。
確認問題として下記に記載しました。
AKIN分類・RIFILE分類・KDIGO分類といった
知らなくて良い分類すべてがCrと尿量で急性腎障害を定義している。
急性腎不全は腎前性・腎性・腎後性の3つに分類されます。
- 腎前性は腎血流低下による急性腎不全
- 腎性は腎本体の障害による急性腎不全
- 腎後性は尿路閉塞による急性腎不全
とイメージしましょう。
【腎不全の機序】腎前性-腎性-腎後性の原因の覚え方・ゴロ【CBT国試対策】
腎前性は腎血流低下による急性腎不全
腎血流が低下する原因としては、「ショック関連+浮腫性疾患(心・肝・腎)」と考えると整理しやすいです。
【循環血液量減少性ショック関連】
- 出血
- 下痢
- 嘔吐
- 脱水
- 熱傷
- 急性膵炎
血液が減少してしまって、腎血流が保てないパターンです。
出血・下痢・嘔吐・脱水は体内の水分が体外へ移動するのでイメージが付きやすいですね。
高カルシウム血症→尿崩症→脱水→腎前性腎不全というパターンが出題されます。
熱傷と急性膵炎は炎症反応によって血管透過性が亢進し、
間質へ水分が移動するので循環血液量が減少します。
【心原性ショック関連】
- AMI急性心筋梗塞
- AMIの合併症(乳頭筋断裂・心室中隔穿孔・心破裂)
- 不整脈
- 心筋炎
- 心筋症
血液量は正常ですが、心臓のポンプ機能が破綻し心拍出量が確保ず腎血流が保てないパターンです。
頻出はAMI急性心筋梗塞ですが、他も心原性ショックをきたす疾患を覚えておくと後々楽です。
【敗血症性ショック・アナフィラキシーショック関連】
- 敗血症
- アナフィラキシー
どちらも炎症性サイトカインによって血管透過性が亢進して、
間質に水分が移動し循環血液量が減少し、腎血流が保てないパターンです。
【浮腫性疾患(心・肝・腎)】
機能低下によって浮腫が起こる臓器といえば「心・肝・腎」が有名です。
特に、浮腫性3大疾患といえば、
- 心不全
- 肝硬変
- ネフローゼ症候群
の3種です。必ず覚えましょう。
心不全は疾患ではなく病態だけど、細かいことは気にせず!
心不全・肝硬変・ネフローゼ症候群は3つセットで語られる。
【心不全・肝硬変・ネフローゼ症候群は3つセット】
cf. 【アルドステロン症の鑑別】原因と血圧-ナトリウム-カリウムの覚え方・ゴロ
心不全で腎前性腎不全になる機序
心不全は心臓のポンプ機能が破綻した状態(心拍出量が減少した状態)です。
心臓のポンプ機能が破綻すると、うっ血が起こり静脈内の静水圧が上昇します。
静水圧の上昇に伴い血管内から間質(血管外組織)へ水分が移動し、
浮腫+循環血液量減少が起こります。
以上より、
- ①心拍出量減少による腎血流の低下
- ②循環血液量減少による腎血流の低下
の2通りで腎前性腎不全が生じます。
肝硬変・ネフローゼ症候群で腎前性腎不全になる機序
肝硬変ではアルブミン生産量が減少し、ネフローゼ症候群では尿中へアルブミンが消失します。
したがって、肝硬変とネフローゼ症候群は共に低アルブミン血症を生じます。
低アルブミン血症では膠質浸透圧が低下するため、血管内から間質(血管外組織)へ水分が移動し、
浮腫+循環血液減少が起こります。
以上より、循環血液量減少による腎血流の低下が起こって腎前性腎不全となります。
【ネフローゼ症候群は腎性も腎前性もあり得るが・・・】
ネフローゼ症候群は「腎血流低下によるのダメージ(腎前性)>>>腎本体へのダメージ(腎性)」
であることが多く、基本的に腎前性腎不全と考えます。
特に微小変化型ネフローゼ症候群や巣状分節性糸球体硬化症は
腎前性急性腎不全になりうることが知られています。
しかし、膜性腎症や膜性増殖性糸球体腎炎は急速進行性糸球体腎炎を起こし、
腎性腎不全になることもあります。
また、糖尿病腎症は急性腎不全ではなく慢性腎不全なので、
腎前性・腎性・腎後性という議論になりません。
まとめると、「ネフローゼは基本的に腎前性腎不全だが、例外もあるので注意」ということです。
問題の選択肢を総合的に判断しましょう。
腎性は腎本体の障害による急性腎不全
腎本体が障害される疾患として
- 急性糸球体腎炎
- 急速進行性糸球体腎炎
- 急性尿細管壊死
- 腎梗塞
- 横紋筋融解症
- 急性性間質性腎炎
があります。
上記の疾患は腎本体が障害されそうな疾患名なので覚えやすいです。
急速進行性糸球体腎炎の原因疾患はコチラを参照してください。
横紋筋融解症で腎性腎不全が起こる機序はいくつかありますが、
横紋筋が融解して血中に放出されたミオグロビンが腎尿細管に詰まって腎障害を起こすと考えるのが良いでしょう。
頻出は急性尿細管壊死と横紋筋融解症です。
尿細管壊死の原因は
- 出血
- NSAIDs
- 抗菌薬(アミノグリコシド・セフェム)
- 抗がん剤(シスプラチン)
- 造影剤
があります。
基本的に出血は腎前性急性腎不全と考えて良いのですが、
出血による虚血で尿細管壊死が起こり、腎前性より腎性がメインとなる場合があります。
(医師国家試験【85D43】の状態。下記の確認問題を参照。)
腎後性は尿路閉塞による急性腎不全
尿路閉塞が起こる疾患として、
- 尿路結石
- 後腹膜繊維症
- 膀胱癌
- 前立腺肥大症・前立腺癌
- 悪性腫瘍(子宮頸癌など)の尿路浸潤
腎から出た尿管は後腹膜内を通過するので、後腹膜繊維症では尿管が圧迫され腎後性腎不全を引き起こします。
【急性腎不全】腎前性-腎性-腎後性の鑑別と覚え方・ゴロ【CBT国試対策】
腎前性-腎性-腎後性の鑑別に用いられる検査所見として
- 尿浸透圧
- 尿比重
- 尿/血清 Cr比
- 尿/血清 BUN比
- 血清 BUN/Cr比
- 尿中Na濃度
- ナトリウム排泄率:FENa
の7種類を覚えましょう。
ポイントは2点あります。
- ポイント①:「水分の再吸収」と「ナトリウムの再吸収」に分けて考える。
- ポイント②:基準値を覚える。
ポイント①:「水分の再吸収」と「ナトリウムの再吸収」に分けて考える。
検査所見グループ①
- 尿浸透圧
- 尿比重
- 尿/血清 Cr比
- 尿/血清 BUN比
- 血清 BUN/Cr比
は腎が水分の再吸収をできるか?で考え、
検査所見グループ②
- 尿中Na濃度
- ナトリウム排泄率:FENa
は文字通り、腎がナトリウムの再吸収ができるか?で考えます。
この2つを分けて考えないとごちゃごちゃになっちゃうよ!
例)「腎機能が正常で水もナトリウムも再吸収できる場合、尿中ナトリウム濃度は何で決まる?」
水の再吸収が多ければ濃縮され尿中ナトリウム上昇、
ナトリウムの再吸収が多ければ尿中ナトリウム低下となります。
つまり、尿中ナトリウム濃度は水とナトリウムの再吸収の塩梅といった2つの因子に左右され予測できません。
したがって、尿中ナトリウムは水の再吸収ではなく、
ナトリウムが再吸収できるか?といった1因子のみで考えるべきなのです。
混乱しないように一元的に考えるべき!
ポイント②:基準値の数字を覚える。
基準値の数値はいくつか出てきますが、まずは頻出の「20」を覚えましょう。
覚え方:腎前性「ZinZenn性」から連想する
Zin→Zが2に見える
Zenn→Zero→0
以上より、基準値「20」を覚えられます。
その他の基準値については随時説明していきます。
腎前性が山場です!
張り切っていこう!
腎前性腎不全を鑑別【覚え方】
「腎前性は腎血流低下による急性腎不全」と説明しました。
腎血流が低下すると、腎臓は腎血流を増やすために
- 水分の再吸収を促進
- ナトリウムの再吸収を促進
します。
水分の再吸収を促進=主にADHによるもの。
ナトリウムの再吸収を促進=主にRASによるもの。
腎前性腎不全では腎機能自体は正常で、
水分の再吸収とナトリウムの再吸収はできるんだね。
【水分の再吸収が促進されると・・・】
腎前性腎不全では水分の再吸収によって尿が濃縮され、
- 尿浸透圧
- 尿比重
- 尿/血清 Cr比
- 尿/血清 BUN比
- 血清 BUN/Cr比
が上昇します。
尿/血清 Cr比・尿/血清 BUN比
水分の再吸収が進むと、尿が濃縮され、尿中のCr濃度・尿中BUN濃度が上昇するため、
それぞれの 尿/血清 比は
- 尿/血清 Cr比>40
- 尿/血清 BUN比>20
に上昇します。
腎前性の尿/血清 Cr比の基準値は「>40」となっていますが、
腎性の尿/血清 Cr比の基準値は「<20」なので、
厳密には違いますが、
- 尿/血清 Cr比>20
- 尿/血清 BUN比>20
と変更して覚えても差し支えないです。
基準値は覚えられるように改変して、
頻出の基準値「20」を活用していこう!
尿浸透圧・尿比重
さらに、Cr・BUNは水より比重が重いので、
尿が濃縮され尿中のCr濃度・尿中BUN濃度が上昇すると、
尿浸透圧・尿比重は上昇傾向になり、
- 尿浸透圧>500mOsm/L
- 尿比重>1.015
となります。
腎前性腎不全の尿浸透圧の覚え方①
「健常人の尿浸透圧の基準値は50~1300mOsm/Lなので、
大雑把に尿浸透圧50~1300の中間の500より濃い」と覚える。
腎前性腎不全の尿浸透圧の覚え方②
「健常人の血漿浸透圧が275~290mOsm/Lなので、
だいたい血漿浸透圧275~290の2倍の500より濃い」と覚える。
腎性腎不全の章でも覚え方を紹介するよ!
合わせて考えると覚えやすいから心配せず前に進もう!
腎前性腎不全の尿比重の覚え方
「健常人の尿比重の基準値は1.003~1.030なので、尿比重の1.003~1.030の中間の1.015より重い」と覚える。
血清 BUN/Cr比
「水分の再吸収が進むと、尿が濃縮され、尿中のCr濃度・尿中BUN濃度が上昇する」と解説しましたが、
実は吸収率に差があります。
健常者では
- Crは再吸収されない
- BUNは約50%再吸収される
- Naは99%再吸収される
という特徴があり、「BUNはCrより吸収されやすい」のです。
したがって、水分の再吸収が亢進すると、水とともにBUNの再吸収も亢進し
- 血清 BUN/Cr比>20
となります。
頻出の基準値「20」を活用していこう!
【尿/血清 BUN比上昇と血清 BUN/Cr比上昇は矛盾している?】
腎前性腎不全の基準値に
- ①尿/血清 BUN比>20
- ②血清 BUN/Cr比>20
があります。
一見「①より血清BUN濃度は低下?②より血清BUN濃度は上昇?矛盾する?」と
迷う方がいらっしゃいます。
結論は「血清BUN濃度は上昇し、それを上回るレベルで尿中BUN濃度も上昇している」ということになります。
①を見て、「血清BUN濃度は低下」と考えるのは誤解なので注意しましょう。
次はナトリウムについて解説するよ!
【ナトリウムの再吸収が促進されると・・・】
腎前性腎不全ではナトリウムの再吸収によって
- 尿中Na濃度
- ナトリウム排泄率:FENa
が低下します。
尿中Na濃度
腎前性腎不全の基準は
- 尿中Na濃度<20mEq/L
です。
頻出の基準値「20」を活用していこう!
ナトリウム排泄率:FENa
FENa:fractional exretion of sodium
FENaとは「原尿中のNaのうち、何%が尿中に排出されたかを示す値」です。
前章で、健常者では
- Crは再吸収されない
- BUNは約50%再吸収される
- Naは99%再吸収される
という特徴があると説明しました。
つまり、健常者では原尿のNaの99%は再吸収され、1%が排出されるということです。
したがって、健常者のFENaの基準値は1%とわかります。
「原尿のNa・水は99%再吸収される」という知識は、
原尿量から尿量を求めるときにも使える知識+試験に頻出なので覚えておきましょう。
以上より、腎前性腎不全ではナトリウムの再吸収が促進=尿中への排泄が抑制されるということなので、
腎前性腎不全の基準は
- ナトリウム排泄率:FENa<1%
と分かります。
以上で山場は終了!
続いて腎性・腎後性について解説するよ!
腎性腎不全を鑑別【覚え方】
「腎性は腎本体の障害による急性腎不全」と説明しました。
腎本体の障害によって再吸収ができないため、
- 水分の再吸収が低下
- ナトリウムの再吸収が低下
の2点で考えると見通しが良いです。
【腎後性は腎性の検査所見と同じ】
腎後性腎不全は尿路閉塞によって尿が腎まで逆流し、
腎本体へ障害が生じるので、最終的に腎性腎不全になります。
腎後性の検査所見=腎性の検査所見と考えて良いです。
【水分の再吸収が低下すると・・・】
腎性腎不全では水分の再吸収が低下するため尿が通常より希釈され、
- 尿浸透圧
- 尿比重
- 尿/血清 Cr比
- 尿/血清 BUN比
- 血清 BUN/Cr比
が低下します。
尿/血清 Cr比・尿/血清 BUN比
尿が通常より希釈され、尿中のCr濃度・尿中BUN濃度が低下するため、
それぞれの 尿/血清 比は
- 尿/血清 Cr比<20
- 尿/血清 BUN比<20
に低下します。
ここでも頻出の基準値「20」を活用していこう!
尿浸透圧・尿比重
尿が通常より希釈され、血漿浸透圧と等張な尿になるので、
- 尿浸透圧 300mOsm/L程度
- 尿比重 1.010程度
となります。
腎性腎不全の尿浸透圧の覚え方
水分の再吸収ができず、尿濃縮ができないため、体液(血漿浸透圧)と等張な尿になってしまう!
健常人の血漿浸透圧が275~290mOsm/Lなので、血漿浸透圧と同じ300と覚えましょう。
逆に、300以上(厳密には500)に濃縮できていた場合は腎本体への障害がないということであり、
腎前性腎不全を疑う所見になります。
腎性腎不全の尿比重の覚え方
「健常人の尿比重の基準値は1.003~1.030なので、尿比重の1.003~1.030の中間の1.015」をまず覚える。
そして
- 尿比重>1.015 =尿濃縮可能=腎前性腎不全
- 尿比重<1.015 =尿濃縮不可=腎性腎不全
と考えましょう。
腎性腎不全では尿比重が1.010程度になることが知られているけど、
新たに基準値を覚えるのはコスパが悪いので、
1.015より大きいかor小さいかで判断しよう!
血清 BUN/Cr比
前章で、健常者は
- Crは再吸収されない
- BUNは約50%再吸収される
- Naは99%再吸収される
という特徴があると説明しました。
腎性腎不全では再吸収されていたはずの約50%のBUNがそのまま尿中に排泄されてしまうため、
Crと比べて血中濃度が低くなります。(腎障害によるCr上昇速度>BUN上昇速度)
したがって、
- 血清 BUN/Cr比<20
となります。
頻出の基準値「20」を活用していこう!
次はナトリウムについて解説するよ!
【ナトリウムの再吸収が低下すると・・・】
腎性腎不全ではナトリウムの再吸収低下によって
- 尿中Na濃度
- ナトリウム排泄率:FENa
が上昇します。
尿中Na濃度
腎性腎不全の基準値は
- 尿中Na濃度>40mEq/L
です。
腎性の尿中Na濃度の基準値は「<40」となっていますが、
腎前性の尿中Na濃度の基準値は「>20」なので、
厳密には違いますが、
- 尿中Na濃度>20mEq/L
と変更して覚えても差し支えないです。
基準値は覚えられるように改変して、
頻出の基準値「20」を活用していこう!
ナトリウム排泄率:FENa
前章で解説した
「健常者では原尿のNaの99%は再吸収され、1%が排出されるので、健常者のFENaの基準値は1%」を
まず覚えましょう。
そして
- ナトリウム排泄率:FENa<1% =Na再吸収亢進=腎前性腎不全
- ナトリウム排泄率:FENa>1% =Na再吸収低下=腎性腎不全
と考えましょう。
追記:ナトリウム排泄率:FENaの計算方法
FENa
=(ナトリウムクリアランス)÷(クレアチニンクリアランス)
=(尿中Na濃度÷血中Na濃度)÷(尿中Cr濃度÷血中Cr濃度)
=(尿中Na濃度÷尿中Cr濃度)÷(血中Na濃度÷血中Cr濃度)
最後に
・鑑別まとめイラスト
・確認問題
で復習演習して完璧にマスターしよう!
【急性腎不全】腎前性-腎性-腎後性の鑑別まとめ
尿比重・尿/血清Cr比・尿中Na濃度を覚えやすいように変更した表【改正版】を作りました。
復習用に保存しましょう。
確認問題
医師国家試験【116A15】
急性腎障害の診断に用いられる指標はどれか。2つ選べ。
a 尿蛋白量
b 腎の長径
c 時間尿量
d 尿潜血の程度
e 血清クレアチニン値の上昇速度
答えは ce
急性腎障害AKI:acute kidney injury は
- クレアチニンCrの急激な上昇
または - 尿量の急激な減少
と定義できます。
医師国家試験【99D83】
乏尿をきたさないのはどれか。
a 熱傷
b 心筋梗塞
c 大量出血
d 急性糸球体腎炎
e 原発性アルドステロン症
答え e
熱傷・心筋梗塞・大量出血は腎前性腎不全による乏尿、
急性糸球体腎炎は腎性腎不全による乏尿をきたす。
原発性アルドステロン症は低カリウム血症による腎性尿崩症が起こり、多尿になります。
医師国家試験【105I29】
腎性急性腎不全の原因となるのはどれか。
a 糖尿病腎症
b 腎性尿崩症
c 尿管結石症
d 良性腎硬化症
e 横紋筋融解症
答え e
a 糖尿病腎症は急性腎不全ではなく慢性腎不全をきたす。
b 腎性尿崩症による脱水では腎前性腎不全をきたす。
c 尿管結石症は腎後性腎不全をきたす。
d 良性腎硬化症は「良性」であるので急性腎不全にはならない。
医師国家試験【116D7】
腎後性急性腎障害を、腎前性・腎性急性腎障害と鑑別する場合に最も有用な検査はどれか。
a 腎生検
b 尿蛋白定量
c 尿比重測定
d 腹部エコー検査
e 血清クレアチニン値測定
答え d
腎後性の病態は尿路閉塞なので腹部エコーで確認する。
a 腎生検では腎本体に障害がない腎前性と腎後性は正常なので鑑別できない。
b 尿蛋白定量は腎後性でも最終的に腎性に至り腎機能が低下する。
腎性・腎後性でみられるため鑑別はできない。
c 尿比重測定では腎性と腎後性の鑑別ができない。
e 血清クレアチニン値測定は腎前性・腎性・腎後性すべてで上昇する。
医師国家試験【87B58】
急性の腎実質障害による乏尿に特徴的な検査所見はどれか。
a 尿Na濃度20mEq/L以下
b 尿浸透圧500mOsm/L以下
c 尿と血清の尿素窒素比10以上
d 尿と血清のクレアチニン比20以上
e 尿Na分別排泄率〈fractional Na excretion〉1%以下
答え b
腎性腎不全の検査所見を問う問題。
まとめイラスト参照。
医師国家試験【92B61】
腎前性の急性腎不全に合致する検査所見はどれか。
a 尿Na濃度:50mEq/L
b 尿浸透圧:290mOsm/L
c 尿と血清との尿素窒素比:3
d 尿と血清とのクレアチニン比:15
e 尿Na分別排泄率〈fractional Na excretion〉:0.8%
答え e
まとめイラスト参照。
医師国家試験【107B23】
水様下痢が持続し乏尿となった若年男性の検査結果を示す。血圧86/52mmHg。血液所見:Ht 54%。血液生化学所見:尿素窒素64mg/dL、クレアチニン2.8mg/dL、尿酸8.4mg/dL、Na 138mEq/L、K 4.1mEq/L、Cl 101mEq/L。
尿所見として予想されるのはどれか。
a 尿比重1.006
b 尿蛋白3+
c 尿潜血2+
d 尿Na 6mEq/L
e 尿K 0mEq/L
答え d
下痢→脱水による腎前性腎不全を疑う。
血清 BUN/Cr比=64÷2.8≒23より、腎前性だろう。
adはまとめイラスト参照。
b 尿蛋白3+ やc 尿潜血2+ は糸球体障害で生じるので、腎性か末期の腎後性でみられる。
※潜血は尿路出血でも起こり得る(膀胱癌や尿路結石が有名)。
e 尿K 0mEq/L 0にするのは生理的に不可能。
腎血流が低下するとRASによって尿中Kは上昇する。
医師国家試験【90E32】
60歳の女性。生来健康であった。1週前から40℃の発熱,咳および痰が持続し,食欲不振と全身衰弱とが強いので入院した。体温39.6℃。呼吸数26/分。脈拍92/分,整。血圧102/52mmHg。発汗があり,口腔粘膜は乾燥している。右下肺野に湿性ラ音を聴取し,胸部X線写真で同部位に浸潤影を認めた。直ちにセフェム系抗菌薬の筋注を開始した。翌日,夕方まで排尿がなかった。留置カテーテルにより120mlの24時間尿を採取した。尿の色調は茶褐色であった。血清生化学所見:尿素窒素45mg/dL,クレアチニン2.8mg/dL,Na 148mEq/L,K 4.8mEq/L,Cl 108mEq/L。
診断に有用な尿検査はどれか。3つ選べ。
a 蛋白濃度
b 浸透圧
c クレアチニン濃度
d ナトリウム濃度
e カリウム濃度
答え bcd
血圧やや低め・発汗・口腔粘膜乾燥→脱水による腎前性腎不全?
セフェム系抗菌薬→腎性腎不全?
血清 BUN/Cr比=45÷2.8≒16より腎性が疑わしいが鑑別の精度を上げるためbcdを追加する。
医師国家試験【85D43】
48歳の男性。右腸骨動静脈損傷を伴う外傷を受けて緊急入院した。入院時身体所見:意識清明。脈拍120/分,整。血圧76/52mmHg。直ちに緊急止血術を行い,総量3,500mLの輸血を行った。術後48時間目の身体所見:意識清明。脈拍92/分,整。血圧108/78mmHg。中心静脈圧16cmH2O。12時間前から尿量が減少し,最近3時間では10~15mL/時である。赤血球396万,Hb 14.2g/dL。血清生化学所見:Na 138mEq/L,K 5.3mEq/L,尿素窒素44mg/dL,血清クレアチニン3.9mg/dL。
適切な治療はどれか。2つ選べ。
a 昇圧薬の投与
b 輸液量の制限
c 浸透圧利尿薬の投与
d カリウム投与の中止
e 新鮮凍結血漿の点滴静注
答えはbd
出血による循環血液量減少性ショックのため輸血が行われ、
尿量減少とK上昇・BUN上昇・Cr上昇から急性腎不全が疑われる。
ショック→「腎前性」腎不全かと思うが、
- 十分な輸血で血圧は上昇
- 中心静脈圧が高い(基準5~10cmH2O(4~8mmHg))
- BUN/Cr比が11
という点で、
ショック→急性尿細管壊死→「腎性」腎不全になったと考えられる。
a:血圧は安定しているため不要。
b:中心静脈圧が高いため輸液量は制限すべき。
c:脳圧が上昇している患者に有効。
d:すでにカリウムが高いので中止すべき。
e:凝固因子が欠乏している患者に有効。
医師国家試験【97A38】
55歳の男性。尿量の減少と全身倦怠感とのため来院した。腰痛のため市販の非ステロイド性抗炎症薬を3日間大量に服用した。顔面と下腿とに軽い浮腫を認める。脈拍104/分,整。血圧180/100mmHg。肺野にcoarse crackles〈水泡音〉を聴取する。尿道カテーテルを留置し10mL/時の尿量が得られた。尿所見:タンパク3+,糖1+,クレアチニン95mg/dL,Na 50mEq/L,K 11mEq/L。血清生化学所見:総タンパク6.3g/dL,尿素窒素40mg/dL,クレアチニン4.2mg/dL,Na 131mEq/L,K 6.7mEq/L,Cl 100mEq/L。腹部エックス線単純写真で腎陰影の長径は左右とも14cmである。
最も考えられるのはどれか。
a 腎前性急性腎不全
b 腎性急性腎不全
c 腎後性急性腎不全
d 慢性腎不全
e ネフローゼ症候群
答えはb
非ステロイド性抗炎症薬による腎性急性腎不全の疑い。
- 浮腫・高血圧・水泡音から腎前性は否定的。
- 蛋白尿は腎性・腎後性を示唆。
- 尿中Na濃度増加
- 尿/血清Cr比=95÷4.2≒23
より腎性の可能性が高い。
ちなみに、この問題はFENaを算出できる。
FENa
=(尿中Na濃度÷血中Na濃度)÷(尿中Cr濃度÷血中Cr濃度)
=(50÷131)÷(95÷4.2)
=0.3816÷22.61
=0.016877
より、FENa=1.7%となるので、やはり腎性の可能性が高い。
BUNやCrなどの血液検査の基準値の
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終わりに
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