アドレナリン受容体って基礎医学から臨床まで頻出だけど、
忘れちゃう。ポイントをまとめて欲しい。
何か良い覚え方ないの~???
こういった悩みを解決します。
本記事では、
- アドレナリン受容体【α1.α2.β1.β2.β3】と薬の関係
- α作用・β作用の違い
- CBT・医師国家試験のポイント
について分かりやすく解説し、覚え方・ゴロも紹介します。
アドレナリンとノルアドレナリンについても一緒に勉強すると理解が深まります。
試験に活かせるポイントだけまとめて、
頭を整理しながら覚えよう!
小ネタが多いよ(笑)
アドレナリン受容体【α1.α2.β1.β2.β3作用】の違い
アドレナリン受容体には様々な種類(サブタイプ)がありますが、
覚えないといけないのはα受容体2種とβ受容体3種です。
簡単にまとめると下記の表のようになります。
アドレナリン受容体 | 作用 |
---|---|
α1受容体 | 平滑筋の収縮 (血管・前立腺・尿道・瞳孔散大筋・汗腺) |
α2受容体 | ノルアドレナリンの分泌抑制 |
β1受容体 | 心筋の収縮・心拍数増加・レニン分泌亢進 |
β2受容体 | 平滑筋の弛緩(気管・子宮・血管・腸管) 房水生産促進 |
β3受容体 | 代謝促進 (グリコーゲン分解・コレステロール生産・熱生産) 平滑筋の弛緩(膀胱) |
α受容体が刺激(活性化)されて起こる作用をα作用、
β受容体が刺激(活性化)されて起こる作用をβ作用と言い、
薬によってどの受容体を活性化しやすいかが決まっています。
(薬の構造と受容体の親和性の違いによる。)
例えば、アドレナリンはβ1受容体を顕著に刺激し、α1も適度に刺激しますが、
ノルアドレナリンはα1を顕著に刺激し、β1受容体はそれほど刺激しません。
こういうように、薬によって「どの受容体」を「どのくらい」活性化するのかに差があります。
まず、イメージとして、
- アドレナリン受容体は交感神経系を促進する
と覚えておいてください。
交感神経系が促進すると、下記のような反応が起こります。
つまり、アドレナリン受容体は興奮状態(戦闘状態)にするスイッチであり、
戦うのに必要な呼吸や循環は促進され、必要のない消化管系の動きは抑制されます。
では、そのアドレナリン受容体の種類(興奮スイッチの種類)を詳しく説明していきます。
α1受容体の作用【α作用】
平滑筋の収縮(血管・前立腺・尿道・瞳孔散大筋・汗腺)
α1受容体の作用は平滑筋の収縮で、
- 血管平滑筋が収縮すると血圧上昇
- 前立腺や尿道の平滑筋が収縮すると畜尿・尿閉
- 瞳孔散大筋が収縮すると散瞳
- 汗腺が収縮すると発汗
が起こります。
覚え方:「α」は1本のヒモを縛ったように見える
縛る(しばる)→絞める(しめる)イメージ→平滑筋が収縮
【CBT・国家試験のポイント】
- 敗血性ショックの第一選択はノルアドレナリン(α1作用が強い)
(炎症性サイトカインによる末梢血管拡張を抑制して血圧を上げる) - 麻酔時(交感神経遮断)による低血圧にはエフェドリン。
- 尿閉を改善するため、前立腺肥大症の第一選択はα1遮断薬。
アドレナリンはβ作用の方が強いんだよね。
ノルアドレナリン・アドレナリンの作用の違い【覚え方・ゴロ】
ショックの中で敗血性ショックだけは
「第一選択にノルアドレナリンが一番生命予後が良い」という
エビデンスがある。
硬膜外麻酔・脊髄クモ膜下麻酔(脊椎麻酔)の
合併症の低血圧ときたらエフェドリン!
オペでよく見かける。
【エフェドリンの作用の話】
エフェドリンはα1刺激作用とβ1刺激作用がある。(β2刺激作用もある。)
β作用については下記で詳しく説明します。
脊髄くも膜下麻酔(脊椎麻酔)は交感神経周囲に侵襲を伴う手技であるため、
交感神経が障害されてしまった場合、血圧低下+徐脈が起こる。
血圧低下にはα1刺激が有効で、徐脈にはβ1刺激が有効なため、
α1受容体とβ1受容体に結合しやすいエフェドリンが有効なのである。
【CBT対策】麻黄から抽出されるエフェドリン
エフェドリンは植物の麻黄から抽出されて作られます。
古くから漢方薬の成分として用いられてきました。
交感神経を活性化するため、
- 喘息に効く
- 体を温め風邪に効く
等の効用があります。
「麻黄が交感神経刺激作用がある」という知識がCBTに出ていたので、
麻黄→エフェドリン→交感神経刺激 の流れは覚えておきましょう。
α2受容体の作用【α作用】
ネガティブフィードバックによるノルアドレナリンの分泌抑制
【α2受容体の作用機序】
交感神経の節後線維の神経終末からノルアドレナリンが放出されると、
大部分は臓器の受容体(例:血管だとα1受容体・心臓だとβ1受容体)に結合しますが、
一部は神経終末のα2受容体に結合します。(上記の画像参照。)
ノルアドレナリンがα2受容体に結合すると、
神経終末から新たなノルアドレナリンの放出が抑制されます。
つまり、α2受容体は
- ネガティブフィードバックにより、ノルアドレナリンの分泌を抑制
します。
ノルアドレナリンの分泌が抑制されると、末梢血管が拡張し、血圧が低下します。
したがって、α2受容体刺激薬は降圧薬として用いられます。
【CBT・国家試験のポイント】
- 妊娠高血圧症の降圧薬の第一選択はα2受容体刺激薬のαメチルドパ
- 褐色細胞腫の試験はα2受容体刺激薬のクロニジンを用いたクロニジン試験
妊娠高血圧の降圧薬の第一選択は
αメチルドパorヒドララジンだよ!
覚え方:αメチルドパ → α+メ(2画)チルドパ → α2
=αメチルドパはα2受容体刺激薬と気が付ける。
覚え方②・③はコチラ↓で解説しています!
国家試験の選択肢に「αメチルドパ」ってあるときに、
「何の薬かな?」ってならないようにしよう!
αメチルドパはα2受容体刺激薬の降圧薬!!!
β1受容体・β2受容体の作用【β作用】
β1受容体:心筋の収縮・心拍数増加・レニン分泌亢進
β2受容体:平滑筋の弛緩(気管・子宮・血管・腸管)・房水生産促進
特に重要な
- β1受容体は心臓を頑張らせる(収縮力増加・脈拍数増加)
- β2受容体は肺(気管支拡張)・眼(房水生産促進)に関わる
の覚え方を紹介しておきます。
覚え方:ヒトは「心臓を1個」、「肺と眼は2個ずつ」持っている。
- 心臓に関わるのはβ1
- 肺(気管支)と眼(房水生産)に関わるのはβ2
β作用は交感神経作用の1つなので、臓器が分かると作用を予測できます。
β1→興奮時の心臓を想像→収縮力・心拍数増加かな?
β2→興奮時の気管支を想像→気管支拡張かな?
【CBT・国家試験のポイント】
色々ありすぎるので、一部紹介して、別記事に譲ります。
忘れやすい or 重要事項だけピックアップ!
内分泌・代謝では
- 褐色細胞腫のβ刺激でレニン分泌が亢進し、続発性アルドステロン症になる
ことは覚えておきましょう。
他にも、
産婦人科
- 早産の第一選択のβ2刺激薬の塩酸リトドリン(子宮平滑筋を弛緩させる)
眼科
- 原発開放隅角緑内障のβ遮断薬(房水生産を抑制し、眼圧を正常に保つ)
呼吸器
- 気管支喘息のβ刺激薬(気管支平滑筋を弛緩させ、気管支を拡張する)
神経
- 本態性振戦のβ遮断薬(心拍数を低下させ、ドキドキを抑える)
循環器
- 心臓への負荷を減らしたいときのβ遮断薬(慢性心不全・拡張型心筋症・肥大型心筋症・労作性狭心症)
- 心臓の心拍数を減らしたいときのβ遮断薬
などなど、色々あります。
各疾患を勉強しているときに、もう一度この記事に戻ってきて、
理解の助けになれば幸いです。
β3受容体の作用【β作用】
代謝促進
(肝グリコーゲン分解・コレステロール生産・熱生産)
平滑筋の弛緩(膀胱)
β3受容体の作用は代謝促進ですが、よく間違えるポイントがあるので解説します。
覚えるべきβ3受容体の作用は
- グリコーゲン分解による血糖値上昇+コレステロール生産
- 白色脂肪細胞での脂肪分解促進によるコレステロール生産
- 褐色脂肪細胞での熱産生促進
- 膀胱平滑筋の弛緩
です。
【CBT・国家試験のポイント】
- 褐色細胞腫のβ刺激で高血糖・高コレステロール血症になる。
- 過活動膀胱にβ3刺激薬が有効
- 褐色脂肪細胞が活性化すると、褐色脂肪細胞にFDG-PETの18F-FDGが集積するが、
生理的集積なので悪性腫瘍の転移と間違えないように気を付ける。
過活動膀胱では膀胱が収縮しちゃうから、
β3刺激薬で膀胱を弛緩させる!
【CBTのポイント】
- 白色脂肪細胞は脂肪分解、褐色脂肪細胞は熱生産を担う細胞である。
細胞ごとに役割を区別して覚えよう。
脂肪は白っぽくて、熱いものは赤≒褐色っぽいイメージ!
他の覚え方
赤ちゃんは筋肉が少なく、効率的に体温を上げるために褐色脂肪細胞が多い。
つまり、赤ちゃんは褐色細胞腫が多いため、褐色≒「赤」ちゃんと呼ばれるようになった。(一説)
甲状腺機能亢進症は代謝が上がる疾患で、コレステロールは消費され減少します。
褐色細胞腫も代謝が上がる疾患ですが、β作用が大きく、コレステロールも糖も増加するのです。
「代謝が上がる」で共通な2つの疾患。
褐色細胞腫では、
糖は消費されて減るのでは?コレステロールも減るのでは?と
勘違いしやすいので注意!
褐色脂肪細胞が活性化すると、褐色脂肪細胞にFDG-PETの18F-FDGが集積するが、
生理的集積なので悪性腫瘍の転移と間違えないように気を付ける。
FDG-PETでは18F-FDG(18F-フルオロデオキシグルコース)というグルコースに似た放射性医薬品を静注します。
18F-FDGは糖代謝が活発な臓器や悪性腫瘍に集積します。
糖代謝が活発な臓器とは
- 脳(糖が唯一の栄養素)
- 心臓(絶え間なく働き続ける)
- 大腸・小腸(蠕動運動に糖が消費される)
の3つです。
さらに、18F-FDGは尿路から排泄されるので、腎・尿管・膀胱・尿道にも生理的集積が見られます。
また、扁桃腺・舌下腺などでも生理的集積が見られます。
そして悪性腫瘍も糖代謝が活発なので、悪性腫瘍の転移を見つけるのに有効です。
寒さやβ3刺激薬によって褐色脂肪細胞が活性化すると、
褐色脂肪細胞が多く存在する腋窩や肋骨起始部に生理的集積をきたすので、
悪性腫瘍の転移と見間違えないように注意しましょう。
※注意書き※
アドレナリン受容体とその作用については成書によってやや差異があります。
ラット・サル・ヒトで反応が異なるという報告もありました。
β3受容体の立体構造は2021年に解明されたぐらいです。
本記事では大枠を外れず、おさえるべきポイントをまとめました。
例えば、グリコーゲン分解作用はα1やβ2も有しており、
β2に関していえばさらに糖新生増加作用といった他の作用も沢山あります。
しかしながら、重要なのは
- α1の血管収縮
- β2の平滑筋弛緩 +(房水生産)
- 交感神経刺激により褐色細胞腫では糖・コレステロールが増加する
ということなので、区別しやすくするために、
代謝に関係する作用はまとめてβ3に記載しました。
これらの細かい違いについては研究職に進みたい方以外はスルーして良いと思います。
参考になれば幸いです。
最後のまとめ
アドレナリン受容体 | 作用 |
---|---|
α1受容体 | 平滑筋の収縮(血管・前立腺・尿道・瞳孔散大筋・汗腺) |
α2受容体 | ノルアドレナリンの分泌抑制 |
β1受容体 | 心筋の収縮・心拍数増加・レニン分泌亢進 |
β2受容体 | 平滑筋の弛緩(気管・子宮・血管・腸管) 房水生産促進 |
β3受容体 | 代謝促進 (肝グリコーゲン分解・コレステロール生産・熱生産) 平滑筋の弛緩(膀胱) |
以上より、「α1は収縮、β2とβ3は弛緩」に作用していると分かります。
イメージを掴んでおこう。
覚え方:「α」は1本のヒモを縛ったように見える
縛る(しばる)→末梢絞める(しめる)イメージ→血管平滑筋が収縮(血管抵抗増加)
覚え方:「β」はリボンが緩んでいるように見える
緩む(ゆるむ)→平滑筋が弛緩
※ただし、β1:心筋は収縮力増加
終わりに
お疲れ様でした。
参考になれば幸いです。
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