リンパ球性下垂体炎と
Sheehan症候群・下垂体腺腫・サルコイドーシスとの鑑別の仕方は?
国家試験に役立つポイントの覚え方を教えて欲しい!
こういった悩みを解決します。
医師国家試験で鑑別に大切なキーワードをまとめて、ゴロを作りました。
ゴロでサクッと覚えちゃおう!
リンパ球性下垂体炎の鑑別【医師国家試験対策】
リンパ球性下垂体炎は自己免疫による炎症性疾患で、
- ①前葉が主に障害されたリンパ球性下垂体前葉炎
- ②後葉が主に障害されたリンパ球性下垂体後葉炎
- ③前葉後葉ともに障害された混合型
3 つ分けられます。
特に大切なのが、リンパ球性下垂体前葉炎症です。
前葉の炎症により、下垂体前葉機能低下症をきたす疾患です。
(※「リンパ球性下垂体後葉炎は中枢性尿崩症をきたす」という知識だけでOK)
下垂体前葉機能低下症をきたす疾患として、
- リンパ球性下垂体炎
- Sheehan症候群
- 下垂体腺腫
- サルコイドーシス
などがあります。
医師国家試験では、これらの疾患を鑑別できるようにしましょう。
【リンパ球性下垂体前葉炎の鑑別のポイント】
リンパ球性下垂体前葉炎は前葉が炎症によって腫大し、
下垂体腺腫の症候(頭痛・両耳側半盲)が出てきます。
他に特徴的な症候として、
- ①慢性甲状腺炎(橋本病)を合併しやすい(抗サイログロブリン抗体陽性)
- ②妊娠・出産・産褥期の女性に好発しやすい
- ③約半数でプロラクチンが上昇
があります。
リンパ球性下垂体前葉炎は自己免疫疾患だから、
自己免疫疾患の橋本病とか、合併しやすいんだね。
そうだね!
リンパ球性下垂体炎でプロラクチンが上昇する理由
下垂体前葉の炎症が波及し、
- 前葉周囲のドパミン作動性ニューロン(ドパミンが作用し、プロラクチンの分泌を抑制する)
- 視床下部(ドパミンを分泌し、プロラクチン分泌を抑制する)
が破壊され、ドパミンの分泌低下・作用低下が起こり、プロラクチンが上昇する。
表で見てみよう!
リンパ球性下垂体前葉炎 | Sheehan症候群 | 下垂体腺腫 | サルコイドーシス | |
---|---|---|---|---|
抗サイログロブリン抗体 (慢性甲状腺炎(橋本病)合併) | 陽性 | 陰性 | 陰性 | 陰性 |
「妊娠・出産・産褥期」の関連性 | 〇 | 〇 | × | × |
プロラクチン上昇 | 〇 | × | 〇 | 〇 |
【リンパ球性下垂体前葉炎の鑑別のポイント】の解説
①抗サイログロブリン抗体といった慢性甲状腺炎(橋本病)でみられる所見は
Sheehan症候群・下垂体腺腫・サルコイドーシスでは特徴的ではない。
②「妊娠・出産・産褥期」というキーワードは下垂体腺腫・サルコイドーシスで特徴的ではない。
(Sheehan症候群は、「分娩時の大量出血」がキーワード)
③プロラクチン上昇はSheehan症候群ではプロラクチン低下のため、特徴的ではない。
プロラクチノーマといった下垂体腺腫はプロラクチン生産細胞が増殖するためプロラクチンが上昇する。
(先端巨大症でも、プロラクチン生産細胞が増殖することがあるので、プロラクチンが上昇する。)
サルコイドーシスの肉芽腫性病変(炎症性病変)が生じた場合は、
上記に記載した「リンパ球性下垂体炎でプロラクチンが上昇する理由」と同様な理由で
プロラクチンが上昇する場合がある。
では、鑑別のポイントの覚え方・ゴロを見ていこう!
リンパ球性下垂体前葉炎の覚え方・ゴロ【医師国家試験対策】
ゴロ:橋本りんかプロが妊娠!?
橋本→橋本病(慢性甲状腺炎)
りんか→りんぱ球性かすいたい前葉炎→リンパ球性下垂体前葉炎
プロが→プロラクチン上昇
妊娠→妊娠・出産・産褥期
したがって、リンパ球性下垂体前葉炎の特徴は
- 下垂体前葉の炎症による前葉機能低下
に加えて、
- 慢性甲状腺炎(橋本病)を合併しやすい
- プロラクチンが上昇
- 妊娠・出産・産褥期の女性に好発
と分かります。
確認問題:医師国家試験に挑戦
医師国家試験【103I35】改題
組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
a 中枢性尿崩症 ー 低張性脱水
b リンパ球性下垂体前葉炎 ー 妊娠出産期
c 視床下部腫瘍 ー 尿崩症
d Cushing病 ー 蛋白同化作用亢進
e 先端巨大症 ー 同名半盲
答えは bc
中枢性尿崩症では高張性脱水。
視床下部腫瘍の頭蓋咽頭腫による尿崩症が有名。
Cushing病では蛋白異化作用が亢進する。
先端巨大症では両耳側半盲が特徴的。
医師国家試験【108A34】改題
36歳の女性。分娩後の頭痛と視野障害を主訴に来院した。
妊娠28週ころから頭痛、30週から左眼の視野障害が出現した。多尿や多飲はない。
身長165cm、体重62kg。脈拍76/分、整。血圧118/74mmHg。
眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。
対面法による視野検査により両耳側に欠損を認める。
尿所見:比重1.024、蛋白(-)、糖(-)。
血液生化学所見:AST 33U/L、ALT 17U/L、クレアチニン0.6mg/dL、血糖92mg/dL、総コレステロール124mg/dL、Na 140mEq/L、K 3.8mEq/L、Cl 104mEq/L、アンジオテンシン変換酵素〈ACE〉18U/L(基準8.3~21.4)、TSH 0.15μU/mL(基準0.2~4.0)、FT4 0.74ng/dL(基準0.8~2.2)、ACTH 11.4pg/mL(基準60以下)、コルチゾール1.8μg/dL(基準5.2~12.6)、GH 2.7ng/mL(基準5以下)、IGF-I 164ng/mL(基準112~271)、プロラクチン25.4ng/mL(基準15以下)。
免疫血清学所見:CRP 0.3mg/dL、抗サイログロブリン抗体24U/mL(基準0.3以下)。
頭部単純MRI・頭部造影MRIでは下垂体に病変を認める。
最も考えられるのはどれか。
a 髄膜腫
b 下垂体腺腫
c 頭蓋咽頭腫
d サルコイドーシス
e リンパ球性下垂体炎
答はe
前葉の腫大を示唆する頭痛・視野障害(両耳側半盲)に加えて、
キーワードは「妊娠・分娩」・「プロラクチン上昇」・「抗サイログロブリン抗体陽性」。
これらを満たすのは「リンパ球性下垂体炎」しかない。
ACEは正常値なので、サルコイドーシスは考えにくい。
終わりに
お疲れ様でした。
参考になれば幸いです。
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