組織診や細胞診に用いる染色液の覚え方・ゴロを教えてほしい。
こういった悩みを解決します。
本記事では組織診と細胞診に用いられる染色として
- HE染色
- PAS染色
- Papanicolaou染色
- May-Giemsa染色
の4つ取り上げます。
まずは、大枠を覚えて、
そのあと例外も説明します。
【違い】組織診と細胞診の固定液と染色液の覚え方・ゴロ【CBT国試対策】
- 組織診
染色液→HE染色とPAS染色
固定法→ホルムアルデヒド固定(ホルマリン固定)
- 細胞診
染色液→Papanicolaou染色とMay-Giemsa染色
固定法→Papanicolaou染色:アルコール固定
May-Giemsa染色:乾燥固定 - 電子顕微鏡
固定法→グルタールアルデヒド固定 - 術中迅速病理診断
固定せず生理食塩水で湿らせたガーゼで乾燥を防ぐ
HE染色:Hematoxylin Eosin ヘマトキシリン・エオジン
「エッチイー染色」や「ヘマトキシリン・エオジン染色」と読みます。
PAS染色:periodic acid-Schiff 過ヨウ素酸シッフ
「パス染色」と読みます。
Papanicolaou染色:パパニコロウ
May-Giemsa染色:メイギムザ
May(Grünwald)Giemsa メイ(グリュンワルド)ギムザや
Wright-Giemsa ライトギムザもまとめて、
May-Giemsa染色として扱います。
【組織診】染色液(HE染色-PAS染色)固定液の覚え方・ゴロ【CBT国試対策】
ゴロ:「エッチな組織はひどいからパス」
エッチな→HE染色
組織は→組織診
ひどいから→ホルムアルデヒド(ホルマリン)
パス→PAS染色
以上より、
- 組織診の染色はHE染色とPAS染色
- 固定法はホルムアルデヒド固定(ホルマリン固定)
と分かります。
【細胞診/骨髄塗抹標本】染色液(Papanicolaou染色-May-Giemsa染色)
固定液-固定法の覚え方・ゴロ【CBT国試対策】
ゴロ:「パパはアル中&缶の明細書」
パパは→Papanicolaou染色
アル中→アルコール
缶の→乾燥固定
明→May-Giemsa染色
細書→細胞診
以上より、
- 細胞診の染色はPapanicolaou染色とMay-Giemsa染色
- Papanicolaou染色の固定法はアルコール固定
- May-Giemsa染色の固定法は乾燥固定
と分かります。
※May-Giemsa染色のMay=メイグリュンワルド液にアルコールが含まれているため、
メイグリュンワルド液→ギムザ液で染色した後は乾燥固定(送風機)のみで良い。
※ちなみに、新生児マススクリーニングの新生児の踵から採取した血液はろ紙につけて自然乾燥させます。
(cf. 医師国家試験【115C25】)
以上を覚えたうえで、電子顕微鏡と術中迅速病理診断の知識を追加しましょう。
電子顕微鏡はグルタールアルデヒド固定
電子顕微鏡で用いる固定法はグルタールアルデヒド固定です。
ホルムアルデヒド固定(ホルマリン固定)でもアルコール固定でも乾燥固定でもない→消去法で乗り切りましょう。
ちなみに、グルタールアルデヒドは医療機器の滅菌にも用います。
術中迅速病理診断は固定しない
術中迅速病理診断(基本的に組織診)では、手術中に断端が陰性か?(摘出組織の末端まで癌が浸潤していないか?)を確認するために行うことが多いです。
病理診断の結果を待つ間は開腹した状態で待ちます。
つまり「迅速」の通り、時間がないのでホルマリン固定は行いません。
cf. 通常の組織診におけるホルマリン固定でホルマリンが組織に1mm浸潤するのに1時間かかると言われています。
術中迅速病理診断では固定せず生理食塩水で湿らしたガーゼで乾燥を防ぎながら運び、
その後、急速凍結→薄くスライス→HE染色→顕微鏡で観察します。
【染色液・固定法まとめ】
- 組織診
染色液→HE染色とPAS染色
固定法→ホルムアルデヒド固定(ホルマリン固定)
- 細胞診
染色液→Papanicolaou染色とMay-Giemsa染色
固定法→Papanicolaou染色:アルコール固定
May-Giemsa染色:乾燥固定 - 電子顕微鏡
固定法→グルタールアルデヒド固定 - 術中迅速病理診断
固定せず生理食塩水で湿らせたガーゼで乾燥を防ぐ
HE染色
HE染色は組織診で最も使用される染色です。
ヘマトキシリンは核(塩基性)を青紫色に、エオジンは細胞質(酸性)を赤色に染色します。(下記画像参照)
PAS染色
PAS染色は組織診を始めとして幅広く用いられる染色です。
多糖類(グリコーゲンなど)を検出するために用います。(下記画像参照)
覚えておくべき知識として、
- ①真菌の細胞壁は多糖類を含むため、真菌の染色に用いられる。
- ②急性骨髄性白血病の中でM6のみはPAS染色陽性の赤芽球が出現する。
の2点です。
別記事で覚え方・ゴロを解説します。
Papanicolaou染色
Papanicolaou染色は細胞診で最も使用される染色です。
特に悪性腫瘍の細胞診に用いられます。(下記画像参照)
細胞をclassⅠ(異常なし)からclassⅤ(悪性)に分けるパパニコロウ分類があります。
胸水・喀痰・血液といった幅広い検体で腫瘍細胞の検出にすぐれていています。
悪性腫瘍の胸膜播種で胸水の疑い。
胸水に使う染色はどれか?
→Papanicolaou染色
という問題がありました。
染色についてはコチラ↓↓↓を参照してください。
May-Giemsa染色
May-Giemsa染色は末梢血液や骨髄の塗抹標本の染色に用いられます。
血球の染色に優れています。(下記画像参照)
末梢血液像の覚え方・ゴロはコチラで解説↓↓↓
また、感染症では「赤血球内に寄生するマラリア原虫」の検出のためMay-Giemsa染色の末梢血塗抹標本を用います。
確認問題:医師国家試験【113B15】解説
内視鏡下生検により採取された検体でH-E染色による病理組織診断を行うために、検体を直ちに浸すのはどれか。
a 蒸留水
b 重曹水
c 酢酸溶液
d パラフィン
e ホルマリン溶液
答え e
病理組織診断=組織診の一番初め、つまり固定液を問う問題。
ホルマリン溶液=ホルムアルデヒド溶液
確認問題:医師国家試験【108B16】解説
電子顕微鏡による病理検査の組織固定法で最も適切なのはどれか。
a アセトン固定
b アルコール固定
c 乾燥固定
d グルタールアルデヒド固定
e ホルマリン固定
答え d
a 固定に用いない。
b アルコール固定は細胞診で用いられる。
c 乾燥固定は細胞診で用いられる。
d 正しい。
e ホルマリン固定は組織診で用いられるものの、電子顕微鏡では用いない。
確認問題:医師国家試験【107F10】解説
凍結切片による迅速診断時の組織の取扱いで適切なのはどれか。
a アルコール固定液につける。
b ホルマリン固定液につける。
c ドライヤーでよく乾燥させる。
d 生理食塩液で湿らせたガーゼで包む。
e グルタールアルデヒド固定液につける。
答え d
a 「アルコール固定液につける」のはPapanicolaou染色の細胞診で時間がかかるため迅速診断には不向き。
b 「ホルマリン固定液につける」のはHE染色やPAS染色の組織診で時間がかかるため迅速診断には不向き。
c 「ドライヤーでよく乾燥させる」のはMay-Giemsaの細胞診で時間がかかるため迅速診断には不向き。
d 正しい。
e 「グルタールアルデヒド固定液につける」のは電子顕微鏡の固定方法。
終わりに
お疲れさまでした。参考になれば幸いです。
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