クッシング症候群の4分類
「Cushing病・異所性ACTH分泌腫瘍・副腎腺腫・副腎癌」の鑑別方法を
教えて欲しい。
こういった悩みを解決します。
本記事では「まとめイラスト」を用いて4分類を徹底的に解説します。
17-OHCS・17-KS・DHEA-Sの評価の仕方・考え方や負荷試験についても詳しく解説します。
頭の中を整理していこう!
クッシング症候群の4分類と鑑別方法【DEX-CRH負荷試験】CBT国試対策
前提として、クッシング症候群はコルチゾールが増加する病態であり、
コルチゾールの代謝産物である尿中17-OHCSは高値となります。
Cushing病・異所性ACTH分泌腫瘍・副腎腺腫・副腎癌の鑑別のポイントを
- ①ACTH依存性とACTH非依存性に分けて考える。
- ②副腎腺腫のみ男性化がない理由を考える。
- ③DEX負荷試験・CRH負荷試験・メチラポン負荷試験の機序を考える。
の3本立てで解説します。
異所性ACTH分泌腫瘍の肺小細胞癌の特徴はこちら↓で覚えましょう。
【クッシング症候群】ACTH依存性とACTH非依存性に分けて考える。
【クッシング症候群の基礎知識の確認】
Cushing病では下垂体腺腫からのACTH増加によるコルチゾール増加
異所性ACTH分泌腫瘍では腫瘍からのACTH増加によるコルチゾール増加なので、
Cushing病と異所性ACTH分泌腫瘍のコルチゾールはACTH依存性(血中ACTH高値)によるものです。
副腎腺腫では束状層の過形成によるコルチゾール増加、
副腎癌では束状層(浸潤により球状層・網状層も含む)の細胞増殖によるコルチゾール増加なので、
副腎腺癌と副腎癌のコルチゾールはACTH非依存性(血中ACTH低値)によるものです。
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ACTH依存性(Cushing病・異所性ACTH分泌腫瘍)では、
- ACTH増加による色素沈着
- 131I-アドステロールシンチグラムの両側性の集積
が特徴です。
ACTH非依存性(副腎腺腫・副腎癌)では、
- ネガティブフィードバックによりACTHは低下(皮膚は白色傾向)
- 131I-アドステロールシンチグラムの片側性の集積
が特徴です。
シンチグラムには様々な種類がありますが、131I-アドステロールシンチグラムはCushing症候群に特徴的です。
覚え方:コレステロール(コルチゾールの材料)とアドステロールは似てる。
したがって、コルチゾールが増えるクッシング症候群につかうシンチグラムは
- 131I-アドステロールシンチグラム
と分かります。
共通点を見つけて覚えちゃおう。
【クッシング症候群】副腎腺腫のみ男性化が無い理由
結論:副腎腺腫は束状層に限局した腺腫だから。
まず、Cushing病・異所性ACTH分泌腫瘍はACTH依存性なので、
ACTH作用によってアルドステロン・コルチゾール・アンドロゲンが全て増加します。
(アルドステロンは最終的にRASレニン・アンジオテンシン系によって抑制され、正常~低値になる。)
副腎癌は悪性腫瘍なので腫瘍が球状層・束状層・網状層へ浸潤していき、
網状層で細胞増殖が活発になることでアンドロゲンが増加します。
一方で、副腎腺腫は束状層に限局しており、網状層に浸潤していないのでアンドロゲンは増加しません。
むしろ、副腎腺腫によるコルチゾール増加のネガティブフィードバックによりACTHが低下し、
ACTH低下によりアンドロゲンは低値になっていることもあります。
覚えるべきこと①:アンドロゲンが増加していない(低値~正常)だったら副腎腺腫を疑う。
アンドロゲンが増加していないということは、尿中17-KS・血中DHEA-Sも増加していないと同義です。
覚えるべきこと②:尿中17-KS・血中DHEA-Sが増加していない(低値~正常)だったら副腎腺腫を疑う。
【クッシング症候群】低用量DEX負荷試験と高量用DEX負荷試験とは?
クッシング症候群4種(Cushing病・異所性ACTH分泌腫瘍・副腎腺腫・副腎癌)すべての共通点として、
「低用量1mgDEX負荷試験でコルチゾール分泌が抑制されない」ことが挙げられます。
(DEX負荷試験=DEX抑制試験)
cf. 単純性肥満
クッシング症候群と鑑別が重要な「単純性肥満」では
低用量1mgDEX負荷試験でコルチゾール分泌が抑制されます。(尿中17-OHCS低下)
高量用8mgDEX負荷試験とは異なるから
引っかからないように注意しよう!
DEX(Dexamethasone:デキサメタゾン)とは副腎皮質ステロイドの一種で、
DEX負荷試験は尿中17-OHCSの変化を調べる試験です。
健常者では低用量1mgDEX負荷試験を行うと、
DEXが視床下部・下垂体にネガティブフィードバックをかけ、
視床下部からのCRH分泌を抑制+下垂体からのACTH分泌を抑制することで、
コルチゾールの分泌は抑制され、尿中17-OHCSが低下します。
しかし、クッシング症候群ではそもそもコルチゾールが増加しているので、
低用量1mgでは微小変化に過ぎず、中枢(視床下部・下垂体)は反応できません。
つまり、「低用量1mgDEX負荷試験で抑制されない(尿中17-OHCS不変)」となります。
そこで出てきたのが、高量用8mgDEX負荷試験です。
高容量8mgでは中枢(視床下部・下垂体)が反応できる容量であり、
視床下部からのCRH分泌を抑制+下垂体からのACTH分泌を抑制する方向に働きます。
したがって、クッシング症候群の中で唯一「下垂体に原因があるCushing病」だけは
高量用8mgDEX負荷試験で抑制されます。(尿中17-OHCS低下)
異所性ACTH分泌腫瘍はACTHの増加の原因が下垂体ではなく腫瘍なので抑制されません。
(腫瘍はネガティブフィードバックのための受容体を持っていない。)
副腎腺腫や副腎癌はACTH非依存性なので下垂体からのACTH分泌が減ったとしても抑制されません。
- 覚えるべきこと①:クッシング症候群(Cushing病・異所性ACTH分泌腫瘍・副腎腺腫・副腎癌)は
「低用量1mgDEX負荷試験で抑制されない(尿中17-OHCS不変)」 - 覚えるべきこと②:Cushing病のみ
「高量用8mgDEX負荷試験で抑制される (尿中17-OHCS低下)」
cf. 単純性肥満では「低用量1mgDEX負荷試験で抑制される (尿中17-OHCS低下)」
【クッシング症候群】CRH負荷試験・メチラポン負荷試験とは?
CRH負荷試験とメチラポン負荷試験はACTHの変化を調べる試験です。
副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン | CRH | corticotropin releasing hormone |
健常者ではCRHは視床下部から分泌され、下垂体前葉からACTHの分泌を促進します。
メチラポンはコルチゾール合成酵素を阻害する物質で、
コルチゾール減少→フィードバック→ACTH増加となります。
CRHもメチラポンも結局はACTHを増加させるのね!
覚えるべきこと:CRH負荷試験・メチラポン負荷試験の健常者の反応はACTH分泌が増加する。
では、クッシング症候群4種「Cushing病・異所性ACTH分泌腫瘍・副腎腺腫・副腎癌」の
下垂体由来のACTHを考えてみましょう。
まとめると、
- Cushing病→下垂体由来のACTHが増加
- 異所性ACTH分泌腫瘍→腫瘍性ACTHが増加⇔下垂体由来のACTHは抑制(減少)
- 副腎腺腫・副腎癌→コルチゾール増加のフィードバックで下垂体由来のACTHは抑制(減少)
となります。
一般に、負荷試験は
- 増加しているところに増加刺激を与えると過剰反応
- 抑制されているとこのに増加刺激を与えても無反応
の原理を取ります。
したがって、CRH負荷試験・メチラポン負荷試験では
- Cushing病のみが過剰反応(ACTH上昇)
- 異所性ACTH分泌腫瘍・副腎腺腫・副腎癌は無反応(ACTH不変)
となります。
覚えるべきこと:
CRH負荷試験・メチラポン負荷試験では
- Cushing病のみが過剰反応(ACTH上昇)
- 異所性ACTH分泌腫瘍・副腎腺腫・副腎癌は無反応(ACTH不変)
となる。
確認問題:医師国家試験【98A49】に挑戦!
40歳の女性。肥満と高血圧との精査を目的に来院した。6年前から徐々に体重が増加し、3年前から高血圧のため近医で降圧薬の処方を受けている。1か月前から時々胸痛も出現するようになった。身長153cm、体重63kg。脈拍80/分、整。血圧186/100mmHg。尿所見:蛋白(-)、糖1+。血液所見:赤血球490万、Hb 15.1g/dl、白血球9,800。血清生化学所見:総コレステロール287mg/dl、Na 143mEq/l、K 3.4mEq/l。血中コルチゾール基礎値24μg/dl(基準5.2~12.6)、尿17-OHCS排泄量15.6mg/日(基準3~8)、17-KS排泄量1.7mg/日(基準3~11)。尿17-OHCS排泄量はデキサメサゾン8mg/日、2日間の投与で抑制されない。
診断はどれか。
a Cushing病
b 副腎腺腫
c 副腎癌
d 異所性ACTH産生腫瘍
e 単純性肥満
答えは b
17-KS排泄量1.7mg/日と低下するのは副腎腺腫だけです。
終わりに
お疲れ様でした。
上記の「まとめイラスト」を完璧にして試験に挑みましょう。
参考になれば幸いです。
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