
副腎クリーゼの病態が分かりにくい。
症状・原因・治療についてまとめて欲しい。
こういった悩みを解決します。
本記事では、副腎クリーゼについて国家試験的に大切な知識をまとめます。



簡単に病態を整理しておこう!
副腎クリーゼは英語で「adrenal crisis」
副腎クリーゼの病態と症状
副腎クリーゼ(急性副腎不全)とは?
副腎皮質ホルモンの急激な分泌低下や相対的な不足によって、
生命に危険が及ぶ(ショックや低血糖による意識障害に陥る)病態。



簡単に言うと、副腎クリーゼは
『副腎皮質ホルモンの供給<<<全身の需要』の状態へ
急激に悪化する病態。
副腎クリーゼの症状は、アルドステロン不足とコルチゾール不足が主です。
(アンドロゲン不足は生命にそれほど関わりません。)
副腎クリーゼの症状
①アルドステロン不足
- 低血圧(ショック)
- 低ナトリウム血症による中枢神経症状・消化管症状(倦怠感・頭痛・悪心・嘔吐)
②コルチゾール不足
- 低血糖(意識障害)
- 発熱(コルチゾールには抗炎症作用があり、不足すると全身炎症が起こる。)
特にショック・低ナトリウム血症・低血糖は生命予後に関わります。
誤解しやすいのが、
- 副腎クリーゼ=副腎皮質ホルモンの不足
- 甲状腺クリーゼ=甲状腺ホルモンの過剰
という違いです。


副腎クリーゼの原因と背景疾患
副腎クリーゼは慢性副腎機能不全(副腎皮質ホルモンの供給不足)に
何か他の因子が重なって急性増悪として発症することが多いです。
例)
- 慢性副腎機能不全+感染のストレス→発症
- 慢性副腎機能不全+外傷のストレス→発症
- 下垂体前葉機能不全+甲状腺ホルモンの単独投与→発症
- 副腎皮質ステロイド内服により副腎機能低下+ステロイドの急な中止→発症
「副腎クリーゼは『副腎皮質ホルモンの供給<<<全身の需要』の状態へ急激に悪化する病態」と説明しました。
慢性副腎機能不全(副腎皮質ホルモンの供給が減少する)の原因・背景疾患としては、
- ①副腎皮質機能低下症(ステロイド薬の投与も含む)
- ②下垂体前葉機能低下症
があります。
全身の需要が増加する原因としては、
- 重症感染症・外傷によるストレス
- 医原性(甲状腺ホルモンの投与)
があります。



説明を加えていきます。
副腎皮質機能低下症
副腎皮質機能低下症には国家試験的に
- クッシング症候群:Cushing症候群(副腎癌・副腎腺腫)
- アジソン病:Addison病(腎結核(漆喰腎)・がん転移)
- Waterhouse-Friderichsen症候群(髄膜炎菌感染による副腎皮質不全)
- ステロイド薬の長期投与 ←頻出
があります。
ステロイドの長期内服では、ネガティブフィードバックにより副腎皮質機能が抑制されていて、
そこで急激に内服をやめると、全身の需要に追いつけず、副腎クリーゼが起こります。
【副腎クリーゼとアジソン病:Addison病の違い】
ともに副腎皮質不全が起こる疾患ですが、
副腎クリーゼは急性発症で、急激に悪化する重篤な病態であり、
アジソン病:Addison病は慢性な背景で、徐々に悪化するため副腎クリーゼほど重篤ではありません。
下垂体前葉機能低下症
下垂体前葉機能低下症には
- リンパ球性下垂体炎
- Sheehan症候群
- 下垂体腺腫
- サルコイドーシス
があります。


下垂体前葉機能低下症ではACTH分泌が低下しているため、
副腎皮質ホルモン(コルチゾール・アンドロゲン)が低下します。
アルドステロンは慢性的な背景では、RAS(レニン・アンジオテンシン系)によって調節され正常なことが多いです。
(アルドステロンはACTHとRAS(レニン・アンジオテンシン系)の2重支配のため、ACTH単独欠損では正常なことが多い。)
甲状腺ホルモン単独投与が禁忌の理由
Sheehan症候群など、下垂体前葉機能低下症の患者では、甲状腺ホルモンもステロイドも不足しています。
このとき、甲状腺ホルモンをステロイドより先に投与してしまうと、副腎クリーゼが起こるため禁忌です。
(甲状腺ホルモンにより代謝が上がって低血糖が悪化したり、脱水が悪化してショックになる。)
まずは、ステロイドで血糖値を正常化し、その後で甲状腺ホルモンを投与しましょう。
副腎クリーゼの治療
副腎クリーゼではショック・低ナトリウム血症・低血糖が生命予後に関わるので、
- ショック・低ナトリウム血症→生理食塩水
- 低血糖→ブドウ糖液
- アルドステロンとコルチゾール作用のあるヒドロコルチゾン
の3つが治療になります。
ヒドロコルチゾンは副腎皮質ステロイドの1種です。
まとめて覚えましょう。


終わりに
お疲れ様でした。
参考になれば幸いです。
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