赤沈の仕組みについて分かりやすく教えてほしい。
赤沈って何が分かるの?赤沈の検査の目的は?
こういった悩みを解決します。
本記事では赤沈について総まとめします。
赤沈(血沈)とは?【原理と意味を分かりやすく解説】
赤血球-アルブミン-フィブリノーゲン-免疫グロブリンの帯電から理解しよう!
赤沈とは?【簡単な概要】
赤沈(血沈)とは、「赤血球沈降速度」の略語で、英語ではESR:erythrocyte sedimentation rateと記載されます。
その名の通り、赤沈は「赤血球がクエン酸ナトリウム入り採血スピッツ内で沈んでいく速度」を表します。
赤沈の読み方は「せきちん」
「あかちん」ではないです。
基準値は2~15mm/時で、
赤沈が1~2mm/時の場合を「赤沈の遅延(低下・減少)」と言い、
赤沈が15mm/時以上の場合を「赤沈の亢進(上昇・増加)」と言います。
赤沈で分かる事は赤血球・アルブミン・フィブリノーゲン・免疫グロブリンの異常で、
多くは炎症性マーカーとして用いられます。
詳しく原理(仕組み)を解説します。
赤沈の原理(仕組み)と
赤血球-アルブミン-フィブリノーゲン-免疫グロブリンの帯電
赤血球沈降速度(赤沈)を規定する要素は
- 負(-)に帯電する赤血球とアルブミン
- 正(+)に帯電するフィブリノーゲンと免疫グロブリン(抗体)
の2種類です。
まずは、それぞれの電荷(負(-)か?正(+)か?)を覚えましょう。
【ついでに復習】CBTで大切な基礎医学の知識の覚え方
負(-)または正(+)に帯電してるかどうかは基礎医学で大切です。
特に、
- DNAは負(-)に帯電
- ヒストンは正(+)に帯電
は必ず覚えましょう。
【電荷の覚え方①】
DNAの「N」は「Negative(負)」→負(-)に帯電
ヒストンの「ト」→10→十(漢数字の10)→+(プラス)→正(+)に帯電
電荷の意義について(CBT対策なので興味ない人はskip)
負に帯電したDNAは正に帯電したヒストンと結合します。(電気的に引き合う。)
ここから、ヒストンのアセチル化によって遺伝子の発現が促進する理由が導けます。
ヒストンをアセチル化すると
「正の電荷の-NH3+」→「アセチル化」→「-NH-CO-CH3」となり、正の電荷が減少します。
ヒストンの正の電荷が減少すると、DNAの負の電荷と引きあっていた力が減少し、
ヒストンとDNAは乖離して緩むので、転写が促進されます(遺伝子発現促進)。
【電荷の覚え方②】
- 英語表記→マイナスに帯電
- それ以外→プラスに帯電
覚えるために記載を
英語:RBC(赤血球)・Alb(アルブミン)・DNA
⇔
その他:フィブリノーゲン・免疫グロブリン(抗体)・ヒストン
に統一します。
以上より、
- 負(-)に帯電:RBC・Alb・DNA
- 正(+)に帯電:フィブリノーゲン・免疫グロブリン(抗体)・ヒストン
と分かります。
追記:
負(-)に帯電したAlbは正(+)に帯電したカルシウムイオンや水素イオンと結合する
負(-)に帯電したRBCは正(+)に帯電したフィブリノーゲンと結合する
「負(-)に帯電したAlbは正(+)に帯電したカルシウムイオンや水素イオンと結合する」
ということを覚えると、
- 低アルブミン血症でカルシウムを補正する理由
- 過換気症候群やアルドステロン症のアルカローシスでテタニーが生じる理由
が導けます。
また、負(-)に帯電したRBCは正(+)に帯電したフィブリノーゲンと結合することによって、凝固して沈殿します。
(凝固系・赤沈で重要)
これで事前知識はOKです!
赤沈が亢進・遅延する理由に進みましょう!
【炎症】赤沈亢進(上昇・増加)の理由と原因疾患の覚え方【CBT国試対策】
【赤沈が亢進(上昇・増加)する理由と原因疾患まとめ】
①負(-)の電荷をもつRBC・Albの減少
RBCの減少:貧血・循環血漿量増加(妊娠)
Albの減少:ネフローゼ症候群・肝硬変
②正(+)の電荷を持つフィブリノーゲン・免疫グロブリンの増加
フィブリノーゲン・免疫グロブリンの増加
:炎症性疾患(感染症・悪性腫瘍(急性白血病など)・膠原病・急性心筋梗塞・手術・外傷など)
免疫グロブリンが高度増加
:II型アレルギー(自己免疫性溶血性貧血AIHAなど)
:多発性骨髄腫・原発性マクログロブリン血症・MGUS
①負(-)の電荷をもつRBC・Albの減少
負(-)の電荷をもつRBCが減少した場合、赤血球同士の距離が遠くなり、
隣接した赤血球の負の電荷と負の電荷による反発力が低下します。
反発力が低下することで、赤血球が凝固・沈殿し、赤沈が亢進します。
血液って放置したら凝固して、かき混ぜると凝固しにくくなるよね!
反発力が低下=放置されている状態→凝固しやすい!
また、妊娠などの循環血漿量が上昇する場合でも、
ヘマトクリット値(Ht:赤血球濃度)が低下(反発力が低下)するので、赤沈が亢進します。
同様の機序で、アルブミンが低下するような疾患(ネフローゼ症候群や肝硬変)では、
アルブミンと赤血球の反発力が低下し、赤沈が亢進します。
②正(+)の電荷を持つフィブリノーゲン・免疫グロブリンの増加
正(+)の電荷を持つフィブリノーゲンや免疫グロブリンが増加した場合、
正(+)の電荷と赤血球の負(-)の電荷がお互いに引き合うことで、赤血球同士も近づき凝集し、
また、凝固因子であるフィブリノーゲンがフィブリンに変化することで、凝固が活性化され、赤沈が亢進します。
炎症性疾患では非特異的にフィブリノーゲン・免疫グロブリンが軽度上昇するため、
赤沈は炎症マーカーとして用いられることが多いです。
自己免疫性溶血性貧血AIHAといったⅡ型アレルギー疾患は免疫グロブリンが生産される疾患です。
また、多発性骨髄腫・原発性マクログロブリン血症・MGUSは免疫グロブリンが腫瘍性に生産される疾患です。
免疫グロブリンは上記と同様の機序で赤血球と結合し、赤血球同士が凝集するため、赤沈が亢進します。
自己免疫性溶血性貧血AIHAの
特徴の覚え方・ゴロを総まとめしました↓↓↓
【DIC】赤沈遅延(低下・減少)の理由と原因疾患の覚え方【CBT国試対策】
【赤沈が遅延(低下・減少)する理由と原因疾患まとめ】
①負(-)の電荷をもつRBC・Albの増加
RBCの増加:多血症(赤血球増加症)・脱水
②正(+)の電荷を持つフィブリノーゲン・免疫グロブリンの減少
フィブリノーゲンの減少:DIC播種性血管内凝固
①負(-)の電荷をもつRBC・Albの増加
負(-)の電荷をもつRBCが増加した場合、赤血球同士の距離が近くなり、
隣接した赤血球の負の電荷と負の電荷による反発力が上昇します。
反発力が上昇することで、赤血球の凝集が阻害され、赤沈が遅延します。
※多血症や脱水が高度になると、凝集能が反発力を上回り赤沈が亢進する。
血液って放置したら凝固して、かき混ぜると凝固しにくくなるよね!
反発力が上昇=かき混ぜられている状態→凝固しにくい!
②正(+)の電荷を持つフィブリノーゲン・免疫グロブリンの減少
正(+)の電荷を持つフィブリノーゲンや免疫グロブリンが減少した場合、
正(+)の電荷と赤血球の負(-)の電荷のお互いに引き合う力が弱まり、
また、凝固を促進するフィブリノーゲンが減少しているため、凝集しにくく、赤沈が遅延します。
赤沈が亢進-遅延する理由と原因疾患まとめ①②+確認問題
保存用にイラストまとめを作成しました!
赤沈の基準値と採血スピッツの色と順番の覚え方・ゴロ【CBT国試対策】
ゴロ:席に行こう
席→赤沈
に→2
行こう→15
以上より、
- 赤沈の基準値は2~15mm/時
- 1~2mm/時:「赤沈の遅延(低下・減少)」
- 15mm以上/時:「赤沈の亢進(上昇・増加)」
と分かります。
まとめ記事と『暗記カード・確認問題』を用意しました!
コチラで確認してください↓↓↓
採血スピッツの色と順番の覚え方・ゴロはコチラでまとめました↓↓↓
終わりに
お疲れさまでした。
参考になれば幸いです。
『血液』の範囲の覚え方×ゴロ×イラストをまとめました!
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