★★★祝!一周年記念!★★★ 随時、記事を更新・改良中です! コメントや質問、お待ちしております。 一緒に頑張りましょう!

【SIADH診断基準】なぜ低ナトリウムで尿量・血圧・カリウム正常?

【SIADH診断基準】なぜ低ナトリウムで尿量・血圧・カリウム正常?
悩む人

SIADHって、たくさん水分を再吸収しちゃう病気だから
尿量が減って、高血圧・低カリウム血症が起こるはずじゃないの?

こういった悩みを解決します。

本記事では、SIADHの病態を確認しながら尿量・血圧・カリウムが正常な理由を解説し、

SIADHの診断基準をまとめて、知識の整理をしていきます。

ハレル

SIADHで間違えやすいポイントを確認していこう!

ハレル

低カリウムになりそうでならない疾患といえば、
「Sheehan症候群」「SIADH」の2つです。
【なぜカリウム正常】Sheehan症候群の覚え方・ゴロ

SIADHの正式名称は「ADH不適合分泌症候群」

SIADHは英語で「syndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormone」

目次:クリックで飛べます。

なぜSIADHで尿量と血圧が正常なのか?

SIADHの間違えやすいポイント①

SIADHはADH(抗利尿ホルモン)が過剰に分泌される疾患なので、

悩む人

水分の再吸収が増え、尿量は減少し、
吸収した水が体内に溜まり、
血圧は上昇、浮腫・胸水・腹水が出てくるのでは?

という疑問が出ます。

しかし、実際は尿量も血圧も正常で、浮腫・胸水・腹水はありません。

その理由を解説していきます。

SIADHで尿量と血圧が正常な理由

結論

  • 理由①AVPエスケープ現象が起こるから
  • 理由②ナトリウム利尿ペプチドが増加するから
  • 理由③レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAA系・RAS)が抑制されるから

※③は次章で解説

ハレル

「AVPエスケープ現象」
この言葉自体は国試に出ません。
覚えなくていいです。  

理由①AVPエスケープ現象が起こるから

SIADHではADHが分泌されると水分の再吸収量が増えるので、

初めは一過性に循環血液量が増え、尿量が減少します。

しかし、ADHが慢性的に分泌されるとADH受容体のダウンレギュレーションが起こります。

ADH受容体のダウンレギュレーションとは、

ADH受容体が刺激され続けることで、慣れが生じてADHへの応答能が低下することです。

これによって、アクアポリン(水分を再吸収するチャネル)は発現しにくくなり、

水分が再吸収できないため、水利尿(水分の排出)が回復します。

この現象をAVPエスケープ現象といいます。

したがって、

  • 『SIADHのADH分泌増加による尿量減少』

  • 『ADH受容体のダウンレギュレーションによる水利尿回復(尿量増加)』

が打ち消し合って尿量と血圧は正常となります。

つまりSIADHでは、水利尿が進み、尿量は正常となり、

循環血液量は正常からやや増加している(~10%程度)くらいで、

+10%程度の循環血液量増加では、調節機能によって血圧を維持できるため、

血圧は正常・浮腫なし・脱水なし・胸水なし・腹水なしとなるわけです。

理由②ナトリウム利尿ペプチドが増加するから

SIADHでは循環血液量が正常からやや増加(~10%程度)しているため、

心臓に負荷がかかり、

心房からはANP、心室からはBNPといったナトリウム利尿ペプチドが分泌されます。

ナトリウム利尿ペプチドとは、文字通りナトリウムを排泄することで利尿が進み

循環血液量を減少させ、心負荷を軽減させる作用があります。

RAA系を抑制する作用もあるので、さらにナトリウム排泄+利尿が進みます。

ハレル

『ANP・BNP(ナトリウム利尿ペプチド)は
心不全の時に高値になる』

循環器で暗記必須の知識!

したがって、

  • SIADHのADH分泌増加による尿量減少

  • ナトリウム利尿ペプチドのナトリウム排泄による利尿作用(尿量増加)

が打ち消し合って、尿量と血圧は正常・浮腫なし・脱水なし・胸水なし・腹水なしとなります。

メモ

ANP:atrial natriuretic peptides:房性ナトリウム利尿ペプチド

BNP:brain natriuretic hormone:脳性ナトリウム利尿ペプチド

ハレル

BNPは脳性ってついているけど、心室から分泌される。
(↑試験にでる)
脳から見つかったため脳性と名前がついてしまったが、
実際には心室から分泌される。

ANPは文字通り心房から分泌されます。

理由③レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAA系・RAS)が抑制されるから

RAAが抑制されることは、

  • 尿量・血圧が正常
  • カリウムが正常

のどちらにも関わるので次章で詳しく解説します。

なぜSIADHでカリウムが正常なのか?

SIADHの間違えやすいポイント②

SIADHはADH(抗利尿ホルモン)が過剰に分泌される疾患なので、

悩む人

水分の再吸収が増え、ナトリウムやカリウムは希釈され
低ナトリウム血症+低カリウム血症になるのでは?

という疑問が出ます。

しかし、実際は低ナトリウム血症+カリウム正常となります。

その理由を解説していきます。

SIADHでカリウムが正常な理由

理由は

  • レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAA系・RAS)が抑制されるから

です。

前章より、

SIADHの初期では

「ADHが分泌されると水分の再吸収量が増えるので、一過性に循環血液量が増える。」、

SIADHの慢性期では

「水利尿が進み循環血液量は正常からやや増加している(10%程度)」と学びました。

つまり、SIADHでは循環血液量は若干増加しているため、

低ナトリウム血症・低カリウム血症が持続するようにも思えます。

しかし、循環血液量が若干増加するとが腎血流も増加します(GFR増加)。

腎血流が増加すると、レニン分泌は低下します。

レニン分泌が低下するとナトリウムの排泄促進・カリウムの排泄抑制が起こります。

このカリウムの排泄抑制によってカリウムが体内に蓄積していきます。

(低ナトリウム血症は悪化していく。)

したがって、

  • SIADHの循環血液量増加に伴う希釈性低カリウム傾向

  • RAA系抑制による高カリウム傾向

が打ち消し合い、カリウムは正常となります。

RAA系の抑制ではナトリウムの排泄が進む、つまり利尿作用があるので、

  • SIADHのADH分泌増加による尿量減少

  • RAA系抑制による尿量増加

が打ち消し合い、尿量・血圧は正常といった機序もあります。

また、若干の循環血液量増加によって、

RAA系の抑制+ナトリウム利尿ペプチドの分泌亢進が継続し、

ナトリウム利尿が亢進して血中ナトリウム低値・尿中ナトリウム高値が継続します。

SIADHの診断基準と試験のポイント

SIADHの診断基準

主症候

  • 脱水の所見を認めない。

検査所見

  • ①血清ナトリウム濃度は135mEq/Lを下回る。
  • ②血漿浸透圧は280mOsm/kgを下回る。
  • ③低ナトリウム血症、低浸透圧血症にもかかわらず、血漿バソプレシン濃度が抑制されていない。
  • ④尿浸透圧は100mOsm/kgを上回る。
  • ⑤尿中ナトリウム濃度は20mEq/L以上である。
  • ⑥腎機能正常。
  • ⑦副腎皮質機能正常。
ハレル

血清ナトリウム濃度の基準値
血漿浸透圧の計算式・基準値の覚え方・ゴロはコチラ↓

ハレル

尿中ナトリウム濃度の基準値の覚え方・ゴロはコチラ↓

腎機能正常・副腎皮質機能正常でなければいけない理由

前章で解説した通り、

SIADHの病態の成立にはAVPエスケープ現象やRAA系といった腎機能・副腎機能が深く関わります。

つまり、腎機能や副腎機能が異常だった場合、この病態は成立しません。

したがって、

SIADHの診断には腎機能正常・副腎皮質機能正常が条件であり、

腎機能を反映する血中クレアチニンは正常で、

副腎機能を反映する血清コルチゾールや糖は正常である必要があります。

試験のポイント

以上より、病態を理解すると

  • 血中ナトリウム・クロール(Cl)・尿酸は希釈性に低値(≒ヘマトクリットHt低値)となるが、カリウムは正常
  • 血漿浸透圧は低下するが、尿浸透圧は上昇(尿中ナトリウム増加)
  • 糸球体濾過量GFRは増加する(RAA系抑制状態)が、尿量は正常
  • 浮腫・胸水・腹水なし
  • 腎・副腎正常なので血中クレアチニンとコルチゾールや糖は正常

が覚えられます。

ハレル

覚えにくいけど、
病態から考えると覚えやすいポイントを赤字にしたよ。

確認問題:医師国家試験に挑戦!

医師国家試験【104I32】

ADH不適合分泌症候群に合致する血液検査所見はどれか。2つ選べ
a Ht 55%
b 空腹時血糖45 mg/dL
c クレアチニン1.8 mg/dL
d 尿酸2.5 mg/dL
e Na 128 mEq/L

答えは de

c:副腎機能は正常

d:腎機能は正常

医師国家試験【102I21】

ADH不適合分泌症候群〈SIADH〉について正しいのはどれか。
a 浮腫を認める。
b 尿量は減少する。
c 尿浸透圧は血漿浸透圧よりも高い。
d 血清尿素窒素は高値である。
e 血漿アルドステロン濃度は高値である。

答えは c

  • 血中ナトリウム・クロール(Cl)・尿酸は希釈性に低値(≒ヘマトクリットHt低値)となるが、カリウムは正常
  • 血漿浸透圧は低下するが、尿浸透圧は上昇(尿中ナトリウム増加)
  • 糸球体濾過量GFRは増加する(RAA系抑制状態)が、尿量は正常
  • 浮腫・胸水・腹水なし
  • 腎・副腎正常なので血中クレアチニンとコルチゾールや糖は正常

終わりに

お疲れ様でした。

参考になれば幸いです。

分からない事・疑問点・質問がありましたら、お問い合わせ or SNS(下記)にどうぞ。

誤字脱字・新しい情報・覚え方の提案も、共有させて頂けると幸いです。

「ゴロゴロ医学」では覚え方・ゴロ・まとめを紹介しています。

覚えることを最小限に抑え、コスパ良い勉強をサポートします。

不定期の更新になりますので、

【 公式Twitter 】 または 【 公式Instagram 】 のフォローをお願いします 。

公式Twitterはこちら↓↓↓

公式Instagramはこちら↓↓↓


よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次:クリックで飛べます。